交通事故が原因の記憶喪失|請求できる損害賠償の項目を解説
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福山市が公表している交通事故に関する統計資料によると、令和3年に福山市内で発生した交通事故の件数は、965件でした。
交通事故により頭部に外傷を負った場合や強い精神的ストレスを受けた場合には、記憶喪失になることがあります。一時的な記憶喪失であれば治療で回復する可能性がありますが、脳の損傷が原因である場合には高次脳機能障害などの障害が残ってしまう可能性もあります。このような障害が残ってしまった場合には、記憶喪失に関連する損害の賠償を加害者側に対して請求することが可能です。
本コラムでは、事故後に記憶喪失があることが発覚したときにすべきことや、請求できる損害賠償の項目などについて、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が解説します。
1、事故で記憶喪失になる理由
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(1)頭部外傷による逆行性健忘症
交通事故により頭部に強い衝撃を受けると、新しい出来事はちゃんと記憶できるにもかかわらず、事故前後の記憶がなくなることがあります。
これを「逆行性健忘症」といいます。
逆行性健忘症は、記憶をつかさどる海馬の機能が一時停止することで生じると考えられています。 -
(2)精神的ストレスによる解離性健忘
交通事故で強い精神的ストレスを受けると、その事実を受け入れることができず、感情や感覚がまひしてしまうことがあります。
このような状態になると心の防衛反応として、交通事故の記憶が失われることがあり、これを「解離性健忘」といいます。 -
(3)高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、交通事故により脳が部分的に損傷することにより、言語、思考、記憶、行為、学習、注意などの知的機能に障害が生じることをいいます。
高次脳機能障害になると、比較的古い記憶はあるにもかかわらず新しいことが覚えられないなどの記憶障害が生じることがあります。
2、一時的な記憶喪失にとどまらないと考えられるときすべきこと
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(1)医師に相談
記憶喪失があったとしても、本人や本人と初対面の人は、そのことに気付くことができません。
交通事故後の本人の様子から少しでもおかしいとおもうところがあったときは、周囲の家族が本人を説得し、すぐに医師に相談することが大切です。
高次脳機能障害であった場合には、すぐにリハビリを開始することにより、症状の進行を遅らせたり症状を改善できたりする可能性があります。 -
(2)高次脳機能障害の可能性がある場合には検査を行う
高次脳機能障害の具体的な症状は、記憶喪失などの記憶障害、集中力の低下などの注意障害、感情のコントロールができないなどの感情障害であるため、目に見えにくい障害といえます。
高次脳機能障害に詳しくない医師では、症状を見落としてしまう可能性があります。
そのため、これらの症状に少しでも該当するものがあれば、専門の病院を受診するべきでしょう。
専門の医師によりしっかりと検査をしてもらうことで、高次脳機能障害の有無を明らかにすることができます。
また、早期に高次脳機能障害が明らかになれば、リハビリによる症状の改善が期待できるだけでなく、後遺障害等級認定においても有利になるのです。 -
(3)外傷が大きくなくても病院は必ず受診する
交通事故で頭部に強い衝撃を受けたとしても、外傷がほとんどないケースもあります。
しかし、頭部に強い衝撃を受けた場合には、脳損傷が生じるなどの目に見えないダメージが存在していることもあるため、すぐに病院を受診することが大切です。
病院に行かずに放置していると、徐々にダメージが進行して、重篤な障害が残ってしまうことや、最悪の場合には死亡してしまうこともあります。
本人が病院に行くことに消極的であれば、周囲の家族の方がサポートしてあげることも必要です。
3、高次脳機能障害と診断されたときに請求できる損害賠償の項目
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(1)慰謝料
慰謝料とは、被害者が被った精神的苦痛という損害に対する賠償金です。
交通事故の被害者は、「傷害慰謝料」を請求できるほか、後遺障害が残った場合には「後遺障害慰謝料」を請求することもできます。- 傷害慰謝料(入通院慰謝料)
傷害慰謝料とは、交通事故でケガをしたことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
入院や通院をした日数や機関に応じて支払われることから、「入通院慰謝料」とも呼ばれます。
傷害慰謝料は、入院や通院期間が長くなればなるほど金額が大きくなります。
たとえば、高次脳機能障害により1か月間入院し、6か月間通院した場合の傷害慰謝料の相場は、149万円ですが、3か月間入院し、6か月間通院した場合には211万円が相場となります(「弁護士基準」で慰謝料を請求した場合の相場)。 - 後遺障害慰謝料
「後遺障害慰謝料」とは、交通事故が原因で後遺障害が生じたことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
交通事故が原因のケガは、治療を継続したとしても症状の改善が見られない状態になることがあります。
そのような状態を「症状固定」といい、症状固定時点で残存している症状については、後遺障害等級認定の手続きによる等級認定を受けることが可能です。
高次脳機能障害の後遺障害が生じた場合には、以下のような等級が認定される可能性があります。
各等級の認定基準と、「弁護士基準」による慰謝料の相場は以下のとおりです。- 1級1号……神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの(2800万円)
- 2級1号……神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの(2370万円)
- 3級3号……神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの(1990万円)
- 5級2号……神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、とくに軽易な労務以外の労務に服することができないもの(1400万円)
- 7級4号……神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの(1000万円)
- 9級10号……神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの(690万円)
- 傷害慰謝料(入通院慰謝料)
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(2)逸失利益
高次脳機能障害などの後遺障害が生じると、労働能力が著しく制限されることになり、それにより将来得られるはずの収入が得られなくなるという損害が生じます。
このような損害については、「逸失利益」として加害者に対して請求することができます。
具体的な逸失利益の金額は、以下のような計算式によって算出します。逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
「基礎収入」とは、基本的には事故前の1年間の収入です。
「労働能力喪失率」は、基本的には自賠責保険の後遺障害等級に対応する労働能力喪失表を基準として決められます。具体的には、1級では100%、9級では35%の労働能力喪失率になります。
「労働能力喪失期間」は、原則として症状固定時から67歳までの年数になります。
ただし、一括で逸失利益の支払いを受け取ると利息が発生することになるため、「ライプニッツ係数」を利用して中間利息控除を行います。 -
(3)将来介護費
高次脳機能障害により常にまたは随時介護が必要な状態になってしまうと、介護施設での介護または親族による介護が必要になります。介護施設で介護をしてもらう場合には、当然、介護施設の利用料が発生します。
また、親族による介護も、金銭に換算して評価することができます。
そのため、高次脳機能障害の被害者に介護が必要になった場合には、以下の計算式による将来介護費を請求することができます。将来介護費の日額×365日×平均余命期間に対応するライプニッツ係数 -
(4)自宅改装費
高次脳機能障害により重度の後遺障害が生じた場合には、日常生活にも支障が生じてしまいます。
自宅での介護を行う場合には、自宅の階段をスロープにしたり、手すりを設置したり、段差をなくすなどのバリアフリー住宅に改装する必要があります。
このような自宅改装費用についても、交通事故が原因の損害として、加害者に対して請求することができます。
4、交通事故被害にあったら弁護士に相談すべき理由
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(1)保険会社との交渉を任せることができる
交通事故の示談交渉は、加害者が加入する任意保険会社の担当者との間で進めていかなければなりません。
しかし、保険会社の担当者は示談交渉の経験が豊富であり、事故や損害賠償に関する知識の面でも被害者との間には圧倒的な差があるといえます。
保険会社の担当者を相手に対等に交渉を進めていくには、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
弁護士に依頼すれば、保険会社との示談交渉をすべて任せることができるため、精神的な負担も大幅に軽減することが可能です。 -
(2)慰謝料が増額できる可能性がある
交通事故の慰謝料の算定基準には、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の三種類があります。
このうち、被害者にとって最も有利な基準は、弁護士基準です。
ただし、弁護士基準による慰謝料を請求するためには、弁護士に依頼する必要があります。
少しでも慰謝料の金額を増やしたいという方は、弁護士への依頼を検討してください。 -
(3)適正な後遺障害等級の獲得が期待できる
治療を継続しても症状の改善が見込めないときには、後遺障害等級認定の手続きを行う必要があります。
とくに、交通事故により記憶喪失になったような場合には、高次脳機能障害に関する後遺障害等級が認定されて賠償額が高額になる可能性があります。
しかし、高次脳機能障害の事案は、他の後遺障害事案に比べて、提出すべき資料も多く、非常に複雑な手続きになります。
知識や経験の豊富な弁護士に依頼すれば、適正な後遺障害等級の認定を受けるためのサポートを得られます。
5、まとめ
交通事故により記憶喪失になった場合には、脳に何らかのダメージを負っている可能性があります。
それにより脳が損傷していると高次脳機能障害などの重篤な障害が残ってしまうおそれもあるため、家族の方はしっかりとサポートしてあげることが大切です。
高次脳機能障害に関する損害賠償を適切に請求するためには、弁護士によるサポートが不可欠です。
交通事故の被害に遭われてお困りの方は、まずは、ベリーベスト法律事務所までご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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