過労死を弁護士に相談するメリットとは? 損害賠償請求の準備を解説

2024年05月02日
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過労死を弁護士に相談するメリットとは? 損害賠償請求の準備を解説

広島労働局が公表している死亡災害発生状況に関する統計によると、2022年に広島県内で発生した労災による死亡者数は、27件でした。前年の死亡者数が11件でしたので、大幅な増加となっています。

過労死が起こってしまった場合、ご家族や親しい方々の悲しみははかりしれません。しかし、企業に責任を問うためには、早期に弁護士に相談することをおすすめします。損害賠償請求のための証拠収集や交渉、訴訟などにおいて適切なサポートを得られるというメリットがあるからです。

今回は、過労死認定を受けるための要件、損害賠償の準備・方法、過労死を弁護士に相談するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が解説します。

1、過労死で請求できるものとは?

過労死が起きた場合、労働災害においてどのような請求ができるのでしょうか。以下では、過労死の概要と過労死により請求できるものについて説明します。

  1. (1)過労死とは?

    過労死とは、仕事による過重なストレスが原因の一つとなって、脳心臓疾患にかかり死亡してしまうこと、または、精神障害を発病して自殺してしまうことをいいます

    過労死は、過労死等防止対策推進法で、以下のように定義されています。

    • 業務上の過重な負荷による脳血管・心臓疾患が原因となる死亡
    • 業務上の強い心理的負荷による精神障害が原因となる自殺による死亡


    なお、死亡に至らない脳血管疾患、心臓疾患、精神障害についても過労死「等」として、過労死等防止対策推進法の対象に含まれています。

  2. (2)労災保険からの補償

    過労死の労災認定基準については、第2章で詳しく説明しますが、労働基準監督署から過労死による労災認定を受けることができれば、労災保険から以下のような補償を受けられます

    ① 遺族補償年金
    遺族補償年金は、対象となる遺族が1人の場合、給付基礎日額の153日分の金額が年金として毎年支給されます。この場合には、遺族補償年金の受給対象となる遺族に対し、遺族補償年金とは別に、遺族特別支給金として300万円の一時金、および遺族特別年金として算定基礎日額の153日分の年金が支給されます。

    ② 遺族補償一時金
    遺族補償一時金は、遺族補償年金の支給対象となる遺族がいない場合には、一定の範囲の親族に対して、給付基礎日額の1000日分が一時金として支給されます。この場合には、遺族補償一時金の受給対象となる親族に対し、遺族補償一時金とは別に、遺族特別一時金として算定基礎日額の1000日分の一時金および遺族特別支給金として300万円の一時金が支給されます。

    ③ 葬祭料
    死亡した労働者の葬儀費用を支出した人に対して、葬祭料として、以下のうちいずれか多い方の金額が支払われます。

    • 31万5000円+給付基礎日額の30日分
    • 給付基礎日額の60日分
  3. (3)会社への損害賠償請求

    過労死は、一定の要件を満たした場合、労災保険からの補償の対象になりますが、労災保険からの補償だけでは十分なものとはいえません。そのため、労災保険から補償を受けられるケースであっても、会社に対する損害賠償請求を検討する必要があります。

    以下のような損害については、労災保険からの補償の対象外または不十分な補償となっていますので、会社に対して損害賠償請求を行うことになります

    • 死亡逸失利益
    • 死亡慰謝料
    • 葬祭費用


    ただし、会社に対して損害賠償請求をするためには、労働者が過労死したことについて会社に法的責任があったといえなければなりません。そのためには、会社に安全配慮義務違反があったことを証拠により立証する必要があります。

2、過労死の労災認定を受けるための要件とは?

過労死の労災基準は、「脳・心臓疾患」と「精神障害」の2種類が存在します。以下では、それぞれの労災の認定基準について説明します。

  1. (1)脳・心臓疾患の認定基準

    脳・心臓疾患を原因とする過労死の認定基準は、以下のとおりです。

    ① 対象となる疾病
    労災認定の対象になる脳・心臓疾患については、以下のものが挙げられます。

    • 脳内出血(脳出血)
    • くも膜下出血
    • 脳梗塞
    • 高血圧性脳症
    • 心筋梗塞
    • 狭心症
    • 心停止(心臓性突然死を含む)
    • 重篤な心不全
    • 大動脈解離


    ② 認定基準
    脳・心臓疾患を原因とする労災認定を受けるためには、上記疾病を発症する前に以下の3つの業務のうち、いずれかに起因する過重負荷があったことが必要になります。

    • 異常な出来事……発症直前から前日までに異常な出来事に遭遇したこと
    • 短期間の過重業務……発症前おおむね1週間で特に過重な業務に就労したこと
    • 長期間の過重業務……発症前おおむね6か月間で著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと
  2. (2)精神障害の認定基準

    精神障害を原因とする過労死の認定基準は、以下のとおりです。

    ① 対象となる精神障害
    労災認定の対象になる精神障害については、以下のものが挙げられます。

    • 病状性を含む器質性精神障害
    • 精神作用物質使用による精神および行動の障害
    • 統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害
    • 気分(感情)障害
    • 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害
    • 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
    • 成人のパーソナリティおよび行動の障害
    • 精神遅滞(知的障害)
    • 心理的発達の障害
    • 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害


    このうち、業務に関連して発病する可能性のある代表的な精神障害は「うつ病(気分障害)」や「急性ストレス反応(ストレス関連障害)」などがあります。

    ② 業務による強い心理的負荷
    発病前おおむね6か月間の業務において強い心理的負荷がかかるような業務があったことが要件になります。心理的負荷が極度のものや極度の長時間労働という特別な出来事があった場合には、強い心理的負荷があったと評価されますが、このような特別な出来事がない場合には、「業務による心理的負荷評価表」を用いて心理的負荷を総合判断することになります。

    ③ 業務以外の要因により発病したとは認められないこと
    業務以外の要因で発病したものでないことを確認するために、「業務以外の心理的負荷評価表」を用いて心理的負荷の強度が評価されます。たとえば、精神障害が労働者本人の既往症やアルコール依存症などが要因であった場合には、労災における過労死とは認定されません。

    参考:厚生労働省「精神障害の労災認定」

3、会社に対して過労死の損害賠償請求を進める準備や方法

会社に対して、過労死の損害賠償請求を行う場合には、どのような方法で行えばよいのでしょうか。以下では、過労死の損害賠償請求を進める準備とその方法について説明します。

  1. (1)長時間労働で過労死した証拠を集める

    過労死は、本人や家族が症状に気付かないうちに突然起きることが多いです。そのため、労働者本人が死亡したとしても、それが業務上の負荷が原因であるかどうかが明らかでない事案も少なくありません。

    会社に対して損害賠償請求をするためには、長時間労働を原因とする過労死であることを立証していかなければなりませんので、そのための証拠収集が必要になります。

    たとえば、長時間労働を立証するには、タイムカードや業務日報などが証拠になりますし、精神障害による過労死であれば、精神科や心療内科の通院歴やカルテなどが証拠になります。

  2. (2)会社との間で示談交渉を行う

    労働者の死亡が過労死であることが明らかになったら、次は、会社との間で示談交渉を行います。会社が責任を認めている場合には金額の交渉がメインになりますが、会社が責任を否定している場合には、交渉が難航する可能性が高くなります

  3. (3)労働審判や民事調停を申し立てる

    会社との話し合いで解決が難しい場合には、労働審判や民事調停の申し立てを検討しましょう。労働審判や民事調停は、いずれも当事者以外の労働問題に詳しい第三者が間に入ってくれますので、当事者だけで示談交渉を行うよりもスムーズに問題が解決する可能性が高くなるでしょう

  4. (4)民事訴訟を提起する

    示談交渉、労働審判、民事調停では解決できない場合は、最終的に民事訴訟により解決を図ります。民事訴訟では、裁判所が判断することになりますので、必ず結論が出るというメリットがありますが、証拠に基づく主張立証が必要になりますので、適切な立証活動を行わなければ敗訴のリスクがある点に注意が必要です。

    民事訴訟は、非常に専門的な手続きになりますので、労働者のご遺族だけで進めるのではなく弁護士のサポートを受けながら進めていくのがおすすめです。

    ベリーベスト法律事務所では労働災害専門チームを設け、相談・依頼を随時受付しております。弁護士費用の概要はホームページをご参照ください。

4、過労死について弁護士に相談するメリット

過労死について弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。

  1. (1)必要な証拠収集のサポートを受けられる

    会社に対して損害賠償請求をするためには、会社側に安全配慮義務違反などがあったことを証拠により立証していかなければなりません。事案によって必要になる証拠の種類や内容も異なってきますので、適切な証拠を集めるためには、弁護士のアドバイスやサポートが必要になります。

  2. (2)会社への損害賠償請求を任せることができる

    過労死の事案では、死亡した労働者の遺族が会社との示談交渉を行うことになります。しかし、示談交渉の経験は初めての方がほとんどのため、どのように進めればよいかわからず不安なことも多いと思います。
    弁護士に依頼すれば、代理として示談交渉を行うため、遺族の方の負担を大幅に軽減することができますまた、会社との交渉が決裂した場合でも引き続き弁護士が訴訟対応を行うことができるため、最後まで安心して任せることができます

5、まとめ

過労死は、労災認定の対象となりえますが、そのためには、労災の認定基準を満たす必要があります。また、労災認定を受けるためには、証拠を集めるなどの準備が必要になりますので、弁護士のサポートを受けるのが得策です。

労災認定を受けたとしても労災保険からの補償だけでは十分な補償が受けられないことも少なくないため、不足する部分は会社への損害賠償請求を検討することになります。損害賠償請求には、実績のある弁護士のサポートが重要です。まずはベリーベスト法律事務所 福山オフィスまでご相談ください。

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