労災被害で受けた損害賠償はさかのぼって請求できる? 時効と請求方法
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2022年に広島県内で発生した労働災害による死傷者は8430名でした。
労災(労働災害)に関する給付や損害賠償は、退職した後でも請求できます。消滅時効に注意ながら、早めに請求を行いましょう。
本コラムでは、労災保険給付や労災に関する損害賠償の請求期限(時効)などについて、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が解説します。
1、労災保険給付はさかのぼって請求できる
勤務中や通勤中にケガを負ったり、業務が原因で病気になったり傷害を負ったりした場合、労働者は労働基準監督署に対して労災保険給付を請求することができます。
また、労災保険給付は、治療の完了後や退職後であっても時効が完成するまでは請求可能です。
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(1)労災保険給付の種類
労災保険給付には、以下の種類があります。
被災労働者は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に対して、該当する労災保険給付を請求することができます。① 療養給付
労災病院または労災保険指定医療機関において、負傷や疾病の治療を無償で受けられます(=療養の給付)。
その他の医療機関で治療を受けた場合は、費用全額を立て替えた後、治療費等の実額の補償を受けられます(=療養の費用の支給)。
② 休業給付
労災による負傷や疾病を治療するために仕事を休んだ場合、休業4日目以降、平均賃金の80%の補償を受けられます。
③ 障害給付
労災による負傷や疾病が完治せずに後遺症が残った場合、障害等級に応じた給付を受けられます。
④ 遺族給付
被災労働者が死亡した場合に、遺族の生活を保障するための給付が行われます。
⑤ 葬祭料(葬祭給付)
被災労働者が死亡した場合に、葬儀費用の補償を受けられます。
⑥ 傷病年金
傷病等級第3級以上の負傷や疾病が1年6か月以上治らない場合に、労働基準監督署長の職権により、休業給付から切り替えられて給付されます。
⑦ 介護給付
障害・傷病等級第1級の障害、または第2級の精神・神経障害および腹膜部臓器の障害が残った被災労働者が、現に介護を受けている場合に、介護費用の補償を受けられます。 -
(2)各労災保険給付の請求期限(時効)
上記の各労災保険給付には、以下のように請求期限(時効)が設定されています。
療養給付 療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年 休業給付 賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年 遺族給付 被災労働者が亡くなった日の翌日から5年 葬祭料(葬祭給付) 被災労働者が亡くなった日の翌日から2年 障害給付 傷病が治癒した日の翌日から5年 介護給付 介護を受けた月の翌月の1日から2年
なお、傷病年金は、労働基準監督署長の職権により休業給付から移行されるため、請求時効はありません。
被災労働者やそのご遺族は、請求できる労災保険給付の種類を把握したうえで、忘れずに上記の期限までに請求を行いましょう。
2、労災申請をしないとどうなる?
労働基準監督署に対して期限までに請求しないと、労災保険給付を受けられなくなってしまいます。
たとえば、労災による負傷や疾病の医療費には、健康保険を適用できません。
労災病院や労災保険指定医療機関では無償で治療を受けられますが、それ以外の医療機関における医療費は、いったん全額を立て替える必要があるのです。
労働基準監督署に対して「療養給付」を請求すれば、支払った医療費全額が還付されます。しかし、療養給付の請求期限が過ぎると、労災保険から医療費の還付を受けられなくなるのです。
その他の給付については、療養給付よりも費用が高額となることも多いため、期限が過ぎて請求できなくなることの不利益はいっそう大きいといえます。
なお、労災保険給付の請求期限(時効)が経過しても、会社に対して損害賠償を請求できる余地はあります。
しかし、会社に対する損害賠償請求は、労災保険給付の審査に比べて、解決までに長い期間を要します。
期限までに労災保険給付を請求して、早い段階で一定の補償を受けられるのであれば、それに越したことはありません。
請求可能な労災保険給付については、期限に間に合うように確実に請求しましょう。
3、労災による後遺症を理由に、左遷や退職勧奨をされたらすべきこと
労災が原因で後遺症がのこった被災労働者に対して、会社が閑職への配置転換(=左遷)を行ったり、退職勧奨をしたりするケースがしばしば見られます。
以下では、このような不当な取り扱いを受けた労働者が取るべき対応を解説します。
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(1)弁護士に相談する
まずは、会社に対してどのような主張が可能かを検討するため、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、被災労働者に対する会社の取り扱いをふまえながら、その違法性につき何を主張すべきかを慎重に検討します。
そのうえで、会社が応諾し得る条件や、法的手続きに発展した際の見通しをふまえて、会社との交渉方針を適切に定めます。
労災保険給付とは別途の損害賠償請求についても、弁護士に依頼すれば、交渉・労働審判・訴訟の各手続きを通じて適正な損害賠償を受け取るためのサポートを得られます。 -
(2)会社に損害賠償や退職金の支払いを求める
労災による後遺症を理由に、会社が被災労働者に対して閑職への配置転換を命じることは、人事権の濫用にあたる可能性があります。
配置転換が人事権の濫用にあたる場合は、会社に対して損害賠償を請求することが可能です。
また、労災による後遺症を理由に退職勧奨を受けた場合は、仮にそれを受け入れるとしても、退職条件について交渉を行うべきです。
会社が労働者を解雇するには、厳しい解雇要件をクリアしなければなりません。
そのため、会社は、後日解雇が無効と判断されるリスクを恐れて、退職勧奨を行っていると考えられます。
このような会社の背景事情を考慮すると、賃金の数か月分から1年分程度の退職金の支払いを求めれば、会社が支払いに応じる可能性は十分あります。
会社から一方的に退職を求められた場合は、退職金などの条件提示を求めたり、労働者側から退職条件を提案したりするなどの対応が大切です。
損害賠償請求や退職金交渉については、弁護士に依頼することも可能です。 -
(3)配置転換や退職勧奨の違法性を主張する
労災に起因して不当に左遷された場合には、配置転換の違法性を主張して、元の部署へ戻すよう求めることも考えられます。
また、実質的な強要に及ぶ退職勧奨が行われて、それに応じて退職してしまった場合は、退職勧奨の違法性を主張して復職を求めることもできます。
配置転換や退職勧奨の違法性を主張するにあたっては、会社との間で主張が対立し、労働審判や訴訟に発展する可能性もあります。
そして、労働審判や訴訟で有利な解決を得るためには、会社の行為の違法性について、その根拠となる事実を説得的に示さなければなりません。
弁護士に依頼すれば、審判や訴訟の場で配置転換や退職勧奨の違法性を説得的に主張するなど、被災労働者にとって有利な解決が得られるようなサポートを受けられます。
4、労災をきっかけに退職した会社に請求できる金銭
労災をきっかけに会社を退職した場合、退職後であっても、会社に対して以下のような金銭を請求できる可能性があります。
- 未払い残業代
- 労災による負傷、疾病等の損害賠償(安全配慮義務違反、使用者責任)
- 労災を理由とする不当な取り扱いの損害賠償
ただし、上記の金銭を請求するにあたっては、以下の消滅時効が適用される点に注意が必要です。
消滅時効が完成すると請求できなくなるので、早めに請求へ着手しましょう。
請求権の内容 | 消滅時効期間 |
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未払い残業代請求権 | 行使することができる時から3年(労働基準法第115条、附則第143条第3項) |
債務不履行に基づく損害賠償請求権(安全配慮義務違反など) ※労働基準法に基づく賃金請求権を除く |
以下のいずれか早く経過する期間(民法第166条第1項)
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不法行為・使用者責任等に基づく損害賠償請求権 |
以下のいずれか早く経過する期間(民法第724条)
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弁護士に依頼すれば、示談交渉・労働審判・訴訟などの手続きを通じて、労働者が適正な損害賠償等を受けられるようにサポートが得られます。
労災が原因で会社を退職した方や、労災を理由に会社から不当な取り扱いを受けた方は、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
労災保険給付や損害賠償は、消滅時効が完成していない限り、過去にさかのぼって請求可能です。弁護士のサポートを受けながら、時効が完成する前に請求を行いましょう。
ベリーベスト法律事務所は、労災に関する労働者のご相談を随時受け付けております。
労災保険給付の請求方法がわからない方や、労災について会社に損害賠償などを請求したい方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
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