不倫は違法なの? 法的に何が問題なのか詳しく解説します

2021年06月03日
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不倫は違法なの? 法的に何が問題なのか詳しく解説します

不倫関係になってしまいそうな相手がいる……。そのようなときは、もしも不倫関係になってしまった場合どのような問題が起きるのか、ちょっと立ち止まって考えてみることをおすすめします。

そもそも不倫は違法行為なのか、どこまでが違法なのか、違法だとすると、いったいどんな事態に展開し、誰にどんな責任を負うことになるのかご存じない方もいるかもしれません。そこで本コラムでは、不倫をテーマによくある疑問や不倫をした場合に考えられる展開やリスクなどについて、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が詳しく解説します。

1、法律上の「不倫」の定義

不倫とは、一般用語としては「道徳にはずれること。特に、男女関係で、人の道に背くこと」などと説明されます。「倫」という文字からしても、「倫理」に反する行動を指すものと思われます。となると、配偶者以外の人を心から愛してしまったとか、愛するあまりにキスをしてしまった、というのも、相手の心を裏切って倫理に背いた「不倫」にあたるのかもしれません。

しかし、法律上、違法となる不倫は「不貞(ふてい)」と呼ばれています。不貞の「貞」とは「貞操義務」(結婚したら別の異性と性的関係を持ってはならないという義務)のことです。つまり、不貞行為とは、婚姻中に、配偶者以外の異性と性的関係を持つこと、であって、心の中で倫理違反を行っても、法律上の不貞行為には該当しません。

2、不貞行為とは?

では、不貞行為とは具体的にどの程度の行為を指すのでしょうか。

  1. (1)不貞行為の具体的な定義

    不貞行為とは、夫婦関係にある男女のどちらかが、配偶者以外の異性と自由意志で肉体関係を持つことを指します。なお、この夫婦関係には、事実婚夫婦も含まれますし、同性愛の事実婚夫婦も含まれています。

  2. (2)キスは不貞行為?

    このように、不貞行為とは配偶者以外の異性と性的関係を持つことを指しています。したがって、配偶者以外の異性を好きになる、恋愛めいたメールのやり取りをする、ふたりで映画を見に行く、ドライブに行く、夜遅くまで食事をしたり遊んだりするといった行動は直ちには不貞行為とは言えません。
    そして、手をつなぐ、キスやハグをする、抱きつく、胸やお尻などを触る、などの行為は身体的接触を伴うものであるため、そのときの状況や身体的接触の内容によっては不貞行為に当たる可能性があるとされています

  3. (3)同性との肉体関係は?

    配偶者が異性ではなく、同性と肉体関係を持った場合はどうでしょうか。この点、令和3年2月、東京地裁で同性との肉体関係は不貞行為と認める判決がありました。この裁判は、原告は夫で、妻が他の女性Aと性的行為をしたことについて、夫が女性Aを相手に慰謝料を請求したというものでした。判決では、性的行為をした女性Aに対して11万円の慰謝料などを夫に支払うよう命じました。

    これまで不貞行為の定義は「配偶者が配偶者以外の異性と性的関係を持つこと」でした。とはいえ、同性愛や同性婚も次第に市民権を得てきていますので、今回の判決のように、同性との肉体関係も不貞行為にあたるという考え方に変わっていく可能性が高いでしょう

  4. (4)風俗に行ったら不貞なの?

    最近の裁判では、夫が風俗で性的サービスの提供を受けた場合でも、妻はその相手の女性に対して慰謝料請求することができることを認めています
    他方、離婚が認められるためには、基本的に夫婦関係が破たんしたことが必要です。

    通常、配偶者が不貞をすると、夫婦関係が壊れるので、離婚原因として認められています。
    しかし、風俗の場合、男性は相手の女性に特段の思い入れがあるわけでもなく、単純に一時の性欲を満たすためだけに通っていることが多いです。相手の名前すら知らないこともあります。そのような気晴らし的な性交渉を1回2回したからといって、それは妻に対する思いとは全く別物とも考えられます。特定の思い入れのある不倫相手との「不貞」とは性質を異にするものと評価される余地があるのです。したがって、夫が風俗に行った回数がせいぜい1、2回という程度ならば、離婚請求は認められない可能性が高いと考えられます

    もっとも、仕事上の付き合いを超えて、普段からその風俗業の女性に個人的に頻繁に会って性交渉を続けているような事情があれば、不貞行為として離婚原因になります。また、風俗通いが度を越して、妻からの信頼を完全に失ってしまうような場合は、「婚姻を継続し難い事由」として離婚が認められる可能性もあります。

3、不貞行為を理由に離婚は成立する

不貞行為は夫婦間の義務である「貞操義務」に違反する行為であり、法定の離婚事由として認められる離婚原因のひとつです(民法第770条第1項)。つまり、自分が不貞行為をしてしまうと、配偶者から離婚する!といわれたらどうしようもない、相手を引き留めることができないということです。

4、不貞行為の証拠となり得るもの

  1. (1)スマートフォン上のやりとり

    最近は、スマートフォンやパソコンでのメールやLINE、そのほかメッセンジャーアプリの履歴で配偶者の浮気が判明するケースが増えています。
    カップル専用のアプリもありますので、そのアプリ自体がスマートフォンにダウンロードされていたら、誰か特定の異性と親密な関係にあることが疑われます。そして、やりとりの中で、デートや食事に行く約束をしていることもあるでしょうし、お互いに好意を示す言葉が並んでいることもあるでしょう。

    しかし、単に配偶者が他の異性と連絡を取りあっているという事実だけでは、不貞行為として違法性を指摘するには足りません。
    また、メッセージを超えて、配偶者が他の異性と会っていたという事実があっても、それでも不貞行為を推認させるには不足があります。不貞行為とはあくまで性的関係があることだからです。

    ただし、やりとりの中で、「ラブホテルに行った」ことや「同じ部屋に宿泊した」なことを示すやり取りが残っていれば、不貞行為の存在を強く推認させる証拠となります
    なお、ひとつひとつのやりとりは、不貞行為とまでは認められない内容でも、複数が積み重なって、不貞関係を立証する間接証拠として使われる場合があります。

  2. (2)決定的な写真やビデオ

    もっとも証拠として価値が高いのは、不貞現場を押さえた写真や動画です。不貞相手を自宅に招いた際に、不貞の現場を写真に撮られたというケースもあります。配偶者の浮気を疑って、自宅に隠しカメラをつける人もいるからです。
    また、こっそり尾行されて、ラブホテルに出入りするシーンを写真撮影されることもあります。ラブホテルの出入りについては、ラブホテルに入ったからといって性交渉に至ったわけではない、という主張がなされることもあります。

    しかし、一般の感覚からして、男女がラブホテルに入って数時間過ごした場合、単に話をしていたわけではなく、中で性交渉を行ったものと考えるのが通常です。したがって、ラブホテルに出入りする瞬間の写真や動画が証拠として出されたら、不貞行為があったと認定されるリスクが高いといえるでしょう

  3. (3)音声データ

    配偶者の不貞行為が疑われる際には、思い切って相手にその話を持ち掛けて、浮気相手がいることを認めさせるケースもあります。
    「誰かいるなら、怒らないので正直に話してほしい」などと持ち掛けて、相手にぽろっと口を割らせるやり方です。
    この際に、会話を録音しておけば立派な証拠になります。たとえば次のようなことです。

    • いつ頃から会っているのか
    • 何回くらい不貞行為をしたのか
    • どこで会っているのか
    • どうやって連絡を取っているのか
    • 相手はどこの誰なのか
    • 相手は結婚しているのか
    • 今後どうするつもりなのか


    これらの点について、具体的な録音があれば、不貞行為の証拠として裁判所にも提出できます。なお、裁判所に出す場合は、録音データだけでなく、録音内容のセリフを書き起こした書面を提出する必要があります。

  4. (4)探偵社や調査会社の調査報告書

    不貞が疑われるときに一番大事なことは証拠集めです。しかし、上に書いたような証拠を実際に獲得するのは困難です。下手に動いてしまうと、相手が感づいて、証拠を削除する、慎重になって余計にしっぽをつかみにくくなってしまう、といったことがあります。

    そこで、利用されるのが探偵社や調査会社です。
    配偶者の様子がどうもおかしいけれど、どうやって証拠を集めていいかわからない、家ではあくまで自然に振る舞って、証拠が出るまでは自分は動きたくない、という場合に、調査会社を利用する方が増えています。

    探偵社・調査会社の中には、浮気調査専門の業者もおり、何日も尾行されても、全く気付かなったという方もたくさんいます。また、最近は不貞相手の名前しかわからず、連絡先も住所もわからない、というケースも増えています。このような場合でも、探偵や調査会社を使って相手の情報を調査することが可能な場合があります

5、不貞行為するとどのような展開があり得るか?

  1. (1)離婚を求められる

    不貞行為は法定の離婚事由です。つまり、自分が不貞行為をしたら、たとえ離婚する気がなくても、相手から離婚を求められたら拒めない立場になります

    夫や妻が不倫をしても平気だという方は、決して多くはありません。通常は、深く傷ついて悲しんだり怒ったり、さまざまな感情をぶつけられるでしょう。
    そうした苦しいやり取りの中、離婚に進むことも実際に多数あります。また、子どもがいる場合は、不貞を原因として親が不仲になったり、離婚話が進んだりするケースでは、特に子どもが親への信頼を失い、精神的にもダメージを受けるリスクが高いといえます。不貞行為が家庭に与える影響は相当大きいでしょう。

  2. (2)配偶者からの慰謝料請求

    不貞行為は、配偶者に対する不法行為に該当します。したがって、不倫がバレたら相手に生じた精神的苦痛を賠償しなければなりません

    これは、不貞を理由に離婚した場合でも、なんとかよりを戻して離婚を回避したケースでも同じです。不貞行為自体が違法行為ですから、離婚まで至らなくても、損害賠償責任は発生するのです。
    もっとも、その後も夫婦で共同生活を行う場合は、夫婦間で慰謝料請求をしても、結局のところ同じ財布からお金が回るだけということになるため、慰謝料請求を取りやめるケースもあります。

  3. (3)自分から離婚できなくなる

    不貞行為に及ぶ際には、今の夫婦関係に不満があり、離婚を望んでいる場合もあるでしょう。しかし、不貞行為をした配偶者自身(有責配偶者)が自分から、離婚請求を行うことは原則的に認められていません

    もちろん、相手配偶者側から離婚を求められればそれに応じることになりますが、相手が離婚を嫌がっている場合は、自分が不貞をしてしまうと、離婚できなくなってしまうのです。

    ただし、いったん有責配偶者になると、一生離婚できないというのも、やや不合理ではあります。そこで、現在の裁判実務では、すでに夫婦の関係が破綻しており、将来にわたって回復する見込みがないと判断できる場合は、一定の基準内で有責配偶者からの離婚請求が認める運用がなされています。

  4. (4)相手も既婚者だった場合

    不倫相手も既婚者だった場合、つまり既婚者同士の不倫のことを、ダブル不倫といいます。この場合、自分の家庭のことだけでなく、相手の家庭に不倫がバレることを予想しておく必要があります。

    相手の配偶者からすれば、こちらは夫婦の平穏を壊した加害者ですから、不倫がバレれば、いきなり怒鳴りこまれて謝罪を求められる可能性があります。また、不貞は違法行為ですから、慰謝料を請求されることも覚悟しなければなりません。
    なお、この場合も、夫婦が離婚したほうが慰謝料の額が高くなる傾向にあります

  5. (5)社内不倫だった場合

    不倫相手が同じ会社内だった場合、周りにばれると気まずくなることがあります。会社によっては社内での不貞行為を綱紀違反としているところもあります。解雇までなされるところは少ないでしょうが、不倫によって社内にどんな問題が起きるかはわからないため、何らかの処分を覚悟はしておく必要があります。

    そして、浮気相手の配偶者が突然会社に乗り込んできて苦情を申し立てる、怒鳴る、といったケースはいまだに現実にあります。こんな場合は、とにかく相手に落ち着いてもらって、冷静に示談を進めていくようにしましょう。

6、まとめ

不貞行為は民法上の不法行為であり、実際にさまざまなトラブルを起こしてしまうことがおわかりいただけたかと思います。それでも人間にはいろいろな事情があるもので、不貞行為に進んでしまう方もいるものです。そのようなときでも、自分や相手が負うリスクについてはしっかり理解しておいた方がよいでしょう。
そして、不貞関係は感情問題であると同時に、明らかに法的な問題です。不倫関係で悩みやトラブルを抱えておられる方は、早めに信頼できる弁護士にご相談されるとよいでしょう。

ベリーベスト法律事務所 福山オフィスでは、不貞の慰謝料や夫婦問題について経験豊富な弁護士が在籍し、お一人おひとりの立場に立ってお話を伺っています。お悩みの場合は、ぜひ一度ご相談にお越しください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています