不貞の慰謝料請求をするには、どのような証拠が必要? 手続きの流れも
- 慰謝料
- 慰謝料請求するには
「夫が浮気している」「夫と浮気相手に慰謝料請求したい」という場合、弁護士が真っ先に考えるのはいったいどんな証拠があるのかという点です。ご自身で慰謝料請求をする場合でも、証拠を集めておくことは重要です。
本記事では、不貞の慰謝料を請求するにはどのような証拠が必要か、自分一人でも請求していくことはできるのか、どのような手続きで進めればよいのか、といった点について、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が詳しく解説します。
1、不貞慰謝料請求するには、まずは証拠が必要
-
(1)不貞慰謝料とは
夫婦は、婚姻という法的な制度によっていろいろな権利や義務を持つ関係です。
夫婦お互いに負う義務としては、夫婦が同居する義務、お互いを扶養する義務などがあります。
そして、結婚した以上忘れてはならないのが、貞操義務です。貞操義務とは、配偶者以外の人と性的な関係を持たない義務のことです。
貞操義務に違反する行為を、不貞行為と言います。
具体的には、「自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」が不貞行為の意味です。
不貞行為は配偶者の気持ちを深く傷つける行為です。不貞行為をすると、配偶者に対して精神的苦痛を与えた代償として、慰謝料を支払わなければなりません。これを不貞慰謝料といいます。 -
(2)不貞行為にあたらないもの
不貞行為をしたことを理由に、配偶者に対して慰謝料を請求するためには、配偶者が自分以外の第三者と肉体関係を持ったことを客観的に証明できる必要があります。
たとえば、次のような行為を自分の配偶者がしていれば、怒ったり悲しんだりするのも当然でしょう。- 親し気に手をつないでいた
- 肩を寄せて深夜に二人きりで歩いていた
- 親密そうなムードで、二人で食事をしていた
- 好きだよ、などのメールをやり取りする
- ハグをしていた
しかし、こうした行為は配偶者を傷つける行為ではあるものの、慰謝料の発生原因となる不貞行為とまでは言えません。
不貞慰謝料を請求するためには「配偶者が自分以外の人と肉体関係を持った」という事実を立証できるだけの証拠をできるだけたくさん集めることが重要なのです。
なお、証拠がなくても請求自体は可能です。しかし、「絶対に浮気はしていない」「事実無根だ」などと相手が不貞の事実を否定してくる場合も少なくありません。
また、裁判所で争う場合には、請求する側が不貞の証拠を出さなくてはなりません。夫婦の話し合いでは不貞を認めていた配偶者が、突然手のひらを返し、不貞はなかったなどと言い出すことも決して珍しくはありません。
不貞による慰謝料請求では、不貞行為を具体的に証明できるような証拠を集めることが重要なのです。
では、いったいどんなものが不貞慰謝料請求の証拠となるのでしょうか。
おさえておきたい証拠を見ていきましょう。 -
(3)不貞慰謝料の証拠となるもの
● 不貞現場の写真・動画
自分たちの性行為の写真や動画を撮影する人もいます。不貞行為中の写真や動画が残っていれば、不貞の大きな証拠となります。
● ラブホテルに出入りする場面の写真・動画
不倫相手と二人でラブホテルに入る時の様子を撮影した写真や動画も、不貞行為の有力な証拠となります。
● ホテルの領収書
二人分のホテルや旅館などの宿泊領収書や、宿泊施設の利用明細は不貞行為を疑わせる証拠となり得ます。特に、ラブホテルの領収書は不貞の有力な証拠となります。
● クレジットカード、電子決済の利用明細
ホテルや宿泊施設の領収書がなくても、クレジットカードで決済をしていればクレジットカード利用明細に利用場所、利用日時が残っている可能性があります。
● 不貞行為についてやり取りしているメールやSNS
配偶者と浮気相手のメールやSNSのやりとりの内容から浮気していたことを立証できる場合があります。
ただし、単にお互いに好きだとか、頻繁に会っているというだけでは十分な証拠になりません。相手と肉体関係を持ったという事実を推認させる内容かどうか、吟味が必要です。
● 配偶者が自分の浮気について話した時の録音や自認書
浮気に気が付いた配偶者が、夫婦の会話の中で、不貞行為について問いただして、相手に不貞を認めさせるというケースもよくあります。
この場合、相手が事実を認めて謝罪するということも実際にあるケースです。この告白の様子を録音(録画)したものがあれば、有力な証拠になります。
また、本人が不倫の事実を認めた手紙や書面(自認書ともいいます)などが、不貞の証拠となります。
2、自分で慰謝料請求はできる?
不貞行為をされた側の配偶者は、自分の配偶者と、不貞相手に対して、慰謝料を請求することができます。
弁護士に依頼せずに、ご自身で請求することもできます。また、裁判手続きを利用せずに示談という方法で進めることもできます。
ここでは、弁護士に依頼せずに、ご自身で不倫慰謝料を請求する場合の流れと方法についてご説明します。
-
(1)配偶者に対する慰謝料請求の流れ
① 冷静に証拠を集める
不貞行為を疑ったら、まずは不貞に関する証拠をできるだけ集めましょう。浮気を疑わせるような言動があっても、実際には浮気はしていなかった、というのもよくあることです。
不貞慰謝料を請求する前に、まずは冷静に証拠を集めましょう。
② 金額や離婚についても検討して
証拠が出てきたら、配偶者に対して慰謝料請求をするかどうか、離婚を求めるかといった点をよく考えてください。慰謝料請求を行う場合には、慰謝料額をどうするのか、配偶者が不貞の事実を否定してきた場合はどうするか、といった点についても考えておきましょう。
③ 請求する場面では
金額や方針を決めたら、実際に慰謝料を請求します。配偶者に対する請求では、話し合いの形で請求することもよくあります。ただし、できれば話し合いの場面は録音などで記録に残しておくことをおすすめします。
また、夫婦間でも、慰謝料請求の書面を送って請求することもあります。特に、別居している夫婦間では、話し合う機会を設けること自体が難しく、書面による請求のほうが楽に進められることも多いでしょう。書面で請求する場合には、不貞の事実と慰謝料の支払いを求めること、金額と回答期限などを記載しましょう。
④ 話し合いができないとき
配偶者が慰謝料請求について反論してきた場合や、逆に、全く無視した場合には、話し合いによる解決が困難となりがちです。その場合は、裁判所での調停か訴訟の手続きをとりましょう。
なお、不貞慰謝料に合わせて離婚も求める場合は家庭裁判所の調停手続きに進みます。慰謝料だけを請求する場合には地方裁判所(または簡易裁判所)の調停または訴訟手続きを利用することになります。
⑤ 裁判所の手続きの注意点
慰謝料請求の調停や不貞慰謝料請求訴訟の手続きでは、裁判所のルールに沿った証拠の提出や主張を行う必要があります。
特に離婚や慰謝料請求の訴訟では、訴状、主張書面、証拠説明書など、専門的な書類を整えることも求められます。そして、主張や立証がきちんとできなければ、訴えた側が敗訴してしまうことになります。
くれぐれも、自分が不利にならないように慎重に手続きを進めましょう。 -
(2)浮気相手に対する慰謝料請求の流れ
① まずは証拠集め
浮気相手に請求する場合も、まずは証拠集めから始めましょう。相手は赤の他人ですから、配偶者に対する請求以上に、客観的な証拠が物を言います。
② 相手の情報を確認する
最近では、浮気相手の名前や住所がわからないケースが増えています。インターネット上で出会った場合などは、浮気をしている当事者同士が、お互いの本名や住所を知らないということさえあり得るのです。慰謝料請求をするためには、相手に連絡を取る必要があります。浮気の証拠だけでなく、浮気相手に関する情報もしっかりと集めましょう。
③ 慰謝料の請求を行う
浮気相手に対する請求の第一歩としては、直接会って請求する、書面を送るなどの方法が考えられます。なお、書面で請求する場合は、内容証明郵便や配達証明制度を利用することをおすすめします。相手に書類が届いたかどうかを確認できますし、慰謝料を請求したこと自体の証拠を残すことができるからです。
④ 示談ができなければ調停や訴訟へ
浮気相手がこちらの請求に応じなければ、調停や訴訟など裁判所での手続きの利用を検討しましょう。特に訴訟手続きでは、証拠の有無が重要ですので、この時点で再度、手持ちの証拠を見直して、慎重に進めることがポイントです。 -
(3)自分で慰謝料請求をするメリット
自分で慰謝料を請求するメリットは主に2つあります。
ひとつは、弁護士費用がかからない点です。すべての手続きを自分で行うのであれば、弁護士費用はかかりませんから、この点はメリットと言えるでしょう。
また、相手がスムーズに交渉に応じてくれる場合は、自分でやった方が早く解決までたどり着く可能性があります。特に、相手が不貞の事実を争わず、こちらの請求通りの金額を問題なく払ってくれる場合は、弁護士を入れなくても、当事者間でスピード解決ができるでしょう。 -
(4)自分で慰謝料請求をするデメリット
自分で慰謝料請求をするデメリットは主に2点です。
ひとつは交渉の中で自分に不利な対応をしてしまう可能性がある点です。
証拠の検討から書面作成、相手との交渉、裁判手続きなどをすべて自分でやるとなると、大変な手間がかかるだけでなく、法的に専門的な知識が必要となります。
大事な場面で、うかつな発言をすると、あとから思わぬ結果につながる可能性があります。
そして、交渉や立証がうまくいかなければ、最終的に敗訴するリスクが高まります。
2つ目は、なんといっても精神的な負担が大きいことでしょう。
交渉やトラブルは、それ自体かなりの負担になるものです。
中でも、夫婦間の争い、不貞問題は、精神的なダメージが特に大きいと言われています。
また、配偶者だけでなく、不倫相手との交渉も必要ですから、怒りや苦痛にさらされることも多いものです。
こうした負担を自分一人で抱えていかざるを得ない点が、ご自身で慰謝料請求する場合のデメリットと言えるでしょう。
3、不貞慰謝料請求するなら弁護士に任せるべき理由
弁護士に依頼すれば、配偶者に対する請求も、浮気相手への請求もすべて任せることができます。慰謝料の妥当な金額を判断したり、相手に応じた交渉方法を選択したりすることも、弁護士なら可能です。実際、交渉次第で結果が変わることはよくあることです。
また、慰謝料請求にもっとも重要となる証拠集めについても、弁護士からアドバイスを受けることができます。
証拠の有無は、慰謝料請求の結果に大きく影響しますから、早い段階で弁護士に相談することが得策といえるでしょう。
4、離婚をするなら取り決めておきたいこと
不貞をきっかけに離婚する夫婦は多いものです。この場合、勢いで離婚することなく、しっかりとした取り決めをすることが大切です。
慰謝料以外に、離婚する際に取り決めておきたいこととしては、財産分与、子どもがいる場合は養育費や面会交流の内容などがあります。年金分割などもしっかり検討すべきです。
先々後悔することのないように、弁護士に相談して適切なサポートを受けることをおすすめします。
5、まとめ
本記事では、不貞慰謝料の請求について、詳しくお伝えしました。ベリーベスト法律事務所 福山オフィスでは、不貞慰謝料はもちろん、離婚・男女問題にかかわるあらゆるご相談に応じています。お悩みの方はどうぞお気軽に弁護士までご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|