「会社をたたむ」と決意したら、まず行うべきことは? 手続きの流れを解説

2022年10月31日
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「会社をたたむ」と決意したら、まず行うべきことは? 手続きの流れを解説

広島県福山市において製造・加工業に従事する事業所は、令和2年6月1日時点で1106事業所でした。平成29年以降、製造・加工業の事業所数は減少の一途をたどっています。

会社の経営の状況が悪い場合には、事業を続けて負債を拡大するのではなく、見切りを付けて会社をたたむことも一つの選択肢として考慮することになります。会社をたたむ方法には、「解散・清算」「特別清算」「破産」の3種類があります。

廃業をする際には、自社の状況に合わせた手続きを選択したうえで、弁護士のサポートを受けながら計画的に手続きを進めることが重要になります。本コラムでは、「会社をたたむ」と決決意した場合に検討すべきことや、会社をたたむ手続きの種類や流れについて、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が解説します。

1、「会社をたたむ」と決意したらやるべきこと

会社をたたんで廃業することを決意した場合、手続きやその後の対応方針などを決定するために、まずは自社の状況について正確に分析しなければいきません。
また、一度会社を廃業してしまったら、元には戻せません
「まだ事業を続けたい」と考えている場合には、経営を再建できる可能性がないかどうかについても検討しましょう。

  1. (1)資産と負債の状況を確認する

    廃業の手続きを進めるためには、まずは、会社の資産と負債の状況を確認する必要があります。

    資産が負債を大きく上回っていれば、会社が債務不履行を起こす可能性は低いでしょう。
    その場合には、通常の解散・清算の手続きに従って会社をたたむことができます。
    一方で、負債が資産を上回っている「債務超過」の状況になっていると、そのままでは負債を支払い切ることができません
    この場合、特別清算または破産の申し立てを視野に入れて対応する必要があります。

  2. (2)将来の見込みキャッシュフローを分析する

    仮に会社に十分な資産があったとしても、債務の支払期限までに現預金を用意できなければ、会社は債務不履行を起こしてしまいます。
    債務不履行が発生すると、債権者との間でトラブルを抱えることになるため、会社をたたむ手続きにも支障が出てしまいます。

    廃業直前での債務不履行を回避するためには、将来の見込みキャッシュフローを分析して、資金が尽きてしまうタイミングが訪れないかどうかを確認することが大切です。
    もしどこかのタイミングで資金が尽きてしまうようであれば、特別清算や破産の申し立てを検討しましょう

  3. (3)従業員の処遇を検討する

    会社を廃業する場合、従業員は全員解雇となります。
    従業員に対して解雇を伝えるタイミングは、通常の業務に支障を来さないために、廃業直前とならざるを得ない場合が多いでしょう。

    そのような場合にも、職を失った従業員が路頭に迷うことがないように、なんらかの配慮を行うことが望ましいといえます。
    再就職先をあっせんする余裕まではない場合にも、雇用保険や未払賃金立替払制度の利用を促すなど、困惑する従業員に対して最低限の情報は提供するようにしてください

  4. (4)経営再建の道は残されていないかを再度検討する

    会社をたたむ手続きを始めてしまうと、後戻りはできなくなります。
    もし、「まだこの会社を経営したい」と思う場合には、再建の方法が残されていないかを再検討しましょう

    人件費やテナント料など固定費をカットしたり、民事再生や私的整理などの債務整理を行ったりすることで、経営再建への道が開ける可能性があります。
    弁護士であれば、会社のご状況に合わせて、利用可能な手続きをアドバイスすることができます。
    また、経営の後継者を見つけて事業承継することも、有力な選択肢となる場合があります。
    事業承継に関しても、弁護士がサポートすることが可能です。

2、会社をたたむ3種類の方法

会社をたたむ方法には、主に「解散・清算」「特別清算」「破産」の3種類があります。
以下では、それぞれの方法の概要を解説します。

  1. (1)解散・清算

    支払不能や債務超過が発生していない場合は、株主総会で解散を決議したうえで(持分会社の場合は総社員の同意を得たうえで)、通常の清算手続きにしたがって会社の法人格を消滅させることができます。

    取引先との契約を解消したり、従業員を解雇したりといった対応は必要になりますが、債務不履行に関するトラブルは発生しないため、大きな問題なく会社をたためる可能性が高い方法です
    会社の解散・清算にかかる費用は、登録免許税や官報公告費用が総額で7万円~8万円程度、手続きを弁護士などに依頼する場合の費用が数十万円程度となります。

  2. (2)特別清算

    以下のいずれかの事由がある場合には、裁判所に「特別清算」の申し立てを行うことができます(会社法第510条)。

    1. ① 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること
    2. ② 債務超過の疑いがあること


    特別清算は法人破産に準ずる手続きですが、裁判所ではなく清算人が主導する簡易的な方法により行われる点が、大きな特徴となります
    また、債権者集会で決議された協定に従い、債務の一部がカットされることになります。

    特別清算にかかる費用は、申し立て費用・裁判所に納付する予納金・清算人報酬が総額20万円程度、申し立てを弁護士に依頼する場合の費用が数十万円程度です。

  3. (3)破産

    会社が支払不能または債務超過の状態にある場合は、裁判所に「破産」の申し立てを行うことができます(破産法第15条、第16条)。
    破産手続きでは、会社の財産を換価・処分して債権者に配当した後、会社の法人格を消滅させます。
    裁判所で行われる大掛かりな手続きであるため、煩雑かつ長期間を要するという点がデメリットです。一方で、債権者の同意なく債務免除が認められる点が、大きなメリットとなります

    破産にかかる費用は、シンプルな事例であれば、申し立て費用・裁判所に納付する予納金が総額20万円程度、申し立てを弁護士に依頼する場合の費用が数十万円程度です。
    ただし、複雑な事例では上記の費用が増額する場合もあります。

3、会社をたたむ手続きの流れ

解散・清算、特別清算、法人破産の手続きは、それぞれ、以下の手順で進行します。

  1. (1)解散・清算の手続きの流れ

    1. ① 株主総会による解散決議・清算人の選任
    2. ② 解散・清算人の登記(法務局)
    3. ③ 解散の届出(税務署・都道府県税事務所・市区町村)
    4. ④ 確定申告(税務署・1回目)
    5. ⑤ 財産調査・財産目録等の作成
    6. ⑥ 債権申出の公告・催告
    7. ⑦ 債務の弁済
    8. ⑧ 株主に対する残余財産の分配
    9. ⑨ 決算報告の作成
    10. ⑩ 清算結了登記(法務局)
    11. ⑪ 清算結了の届出(税務署・都道府県税事務所・市区町村)
    12. ⑫ 残余財産確定に伴う確定申告(税務署・2回目)


    株主総会による解散決議および清算人の選任後は、清算人がすべての手続きを行います。
    債務の弁済や残余財産の分配のほか、届出や書類の作成を多段階にわたって行う必要がある点にご注意ください

  2. (2)特別清算手続きの流れ

    1. ① 株主総会による解散決議・清算人の選任
    2. ② 解散・清算人の登記(法務局)
    3. ③ 解散の届出(税務署・都道府県税事務所・市区町村)
    4. ④ 確定申告(税務署・1回目)
    5. ⑤ 財産調査・財産目録等の作成
    6. ⑥ 債権申出の公告・催告
    7. ⑦ 特別清算の申し立て
    8. ⑧ 裁判所による特別清算開始の命令
    9. ⑨ 債権者集会による和解案または協定案の決議・裁判所の認可
    10. ⑩ 和解案または協定案に基づく債務の弁済・債権放棄
    11. ⑪ 特別清算終結決定
    12. ⑫ 特別清算終結の登記(裁判所の嘱託によるため、手続き不要)


    債権申出の公告・催告までは、通常の解散・清算手続きと同様です。
    この段階で債務超過などの事情が確定するため、裁判所に対して特別清算の申し立てを行います。
    特別清算の開始後、債権者集会によって債権カットなどを内容とする和解案または協定案を決議します。
    決議が成立しなければ、裁判所の決定により破産手続きへと移行します。

    和解案または協定案が決議されたら、裁判所は認可を行い、その内容に従って債権放棄が行われるのです。
    最終的には裁判所の決定をもって特別清算が終了して、終結の登記によって会社の法人格が消滅することになるのです

  3. (3)法人破産手続きの流れ

    1. ① 破産手続開始の申し立て
    2. ② 債務者審尋
    3. ③ 破産手続開始の決定・破産管財人の選任
    4. ④ 債権届出・債権確定
    5. ⑤ 財産の換価・処分
    6. ⑥ 債権者集会・債権者に対する配当
    7. ⑦ 破産手続終結の決定
    8. ⑧ 破産手続終結の登記(裁判所の嘱託によるため、手続き不要)


    法人破産の場合、株主総会決議を経ることなく、取締役の決定(または取締役会の決議)に基づき、裁判所に対して破産手続開始の申し立てを行います。
    裁判所は、会社が支払不能または債務超過の状態にあると判断した場合、破産手続開始の決定を行って、同時に破産管財人を選任します。

    その後は破産管財人が主導して、会社財産の換価・処分を行ったのちに、債権者への配当をします。
    すべての手続きが完了したら、裁判所の決定をもって破産手続が終結して、終結の登記によって会社の法人格が消滅することになるのです

4、会社をたたむことを考えている経営者は、弁護士にご相談を

会社をたたんで廃業する場合、状況に合わせた適切な手続きを選択するとともに、債務の弁済や従業員に対するアナウンスなどをきちんと行い、経営者としての責任を最後まで果たすことが大切です。
また、会社をたたむ手続きを進めるためには、法律上のルールを踏まえた対応が必要となります

弁護士であれば、法律の専門知識と経験に基づきながら、円滑に廃業手続きを進めるためのポイントについてアドバイスすることが可能です。
実際の手続きの大部分についても、弁護士が代行しますので、経営者は対応に要する時間や労力をかなり省くことができるでしょう。
事業清算をご検討中の企業経営者は、まずは弁護士までご相談ください

5、まとめ

会社をたたむ手続きには、主に「解散・清算」「特別清算」「破産」の3種類があり、状況に応じて選択すべき手続きが異なります。
円滑に会社を廃業するために、弁護士に依頼することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、会社の廃業に関するご相談を随時受け付けております。
事業会社・休眠会社の廃業をご検討中の経営者の方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください

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