コンプライアンスの重要性について弁護士がわかりやすく解説
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平成28年の調査によれば、福山市には2万1032の事業所があります。事業所の数だけ、コンプライアンスについての悩みがあると思います。
企業のコンプライアンスが叫ばれるようになってから久しいですが、コンプライアンス違反を起こして、存亡の危機に立つことになる企業が跡を絶ちません。コンプライアンスを厳守することは、企業を維持し企業価値を向上させるために必要不可欠です。
本コラムでは、企業が守るべきコンプライアンスの重要性とコンプライアンス対策をする方法について、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が解説いたします。
1、なぜコンプライアンスは重要とされるのか?
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(1)コンプライアンスとは
コンプライアンスとは、もともとは「法令遵守」のことを指すものでした。
しかし、現在では、コンプライアンスとして念頭に置かれるのは、法令だけではありません。会社の就業規則などの社内規定のほか、社会的な規範や倫理・道徳を含んだより広いルールを遵守することを指している、と考えられているのです。
日本では、バブル崩壊以降、損失を隠すための粉飾決算や食品偽装などの不祥事が相次いで明らかになり、透明性ある企業経営の要請が高まったことを背景にして、コンプライアンスの重要性が訴えられるようになりました。 -
(2)コンプライアンスの重要性
コンプライアンスを守ることは、「法令や社会的な規範を遵守する」ということです。企業経営にとって重要なのは明らかでしょう。
さらに一歩踏み込んで考えると、「企業がコンプライアンスを守ることで、企業価値を維持して向上させることができる」という視点もあります。
企業には「CSR(Corporate Social Responsibility)」といわれる企業の社会的責任を果たす必要があると考えられています。
このような企業の社会的な責任を果たすため、コンプライアンスを徹底する必要があるのです。逆にコンプライアンスを実行に移せない企業は、企業の社会的な責任を果たしていない企業であると、消費者や取引先や投資家から判断され、企業価値を維持させることは困難になってしまいます。
したがって、企業価値を維持して、向上させるという観点からも、コンプライアンスは重要となるのです。
2、よくあるコンプライアンス違反とその影響
以下では、典型的なコンプライアンス違反として問題になる事例や、その結果生じる影響について解説します。
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(1)労務管理
コンプライアンス違反が労働法令違反に直結する多々あります。
典型的なものとしては、パワハラ・セクハラといったハラスメント事例、長時間労働の事例、賃金の未払いの事例があげられます。
ハラスメント事例や長時間労働の事例に関しては、従業員が自殺・過労死に至ってしまうなど、痛ましい報道を目にされた方も多いでしょう。
このような事例を起こした企業は、「ブラック企業」などのレッテルを貼られて、社会的な信用の大きな低下を招くことになります。採用活動にも大きな影響が出るほか、従業員からの損害賠償などにも対応しなくてなりません。
また、ハラスメントの態様によっては、関係者が刑法による刑事処分を受けることもあります。さらに、長時間労働の場合も労働基準法による罰則を受ける可能性があります。
賃金の未払いの事例では、労働基準監督署から指導を受ける相当数の企業があり、従業員との未払い賃金に関する法的紛争に対応することになります。 -
(2)不正会計
過去には「ある証券会社が、バブル崩壊による損失を隠すために粉飾決算などを行った」という報道がセンセーショナルになされたことがあります。
このような不正会計の事例によって、コンプライアンスに関する社会の意識が向上することになりました。
現在、これらの不正会計に対する規制は強くなっています。粉飾決算にあっては、上場会社の場合には、金融商品取引法に違反するものとして、法人と個人双方に刑事罰が科せられることになります。
また、近時では大手電子機器メーカーの組織ぐるみによる長期間の不正会計が行われた事例があります。この不正会計は内部告発により発覚し、会社株価は急落して、上場廃止の危機が生じました。
さらに、隠ぺい関与した元社長らは刑事処分を受けるとともに、巨額の損害賠償を命じられたのです。 -
(3)個人情報の漏えい
個人情報の漏えいの典型的なケースとしては、通信教育大手会社のグループ会社の派遣社員が、顧客情報を売却し大規模な個人情報が流出した事例があります。
この事例では、消費者などの顧客離れが生じ会社は赤字となり、また、取締役も引責辞任することになりました。
ほかにも、このような従業員個人による行動の場合のほか、会社としてセキュリティー対策に不備があることで、個人情報の漏えいが起こってしまう場合もあります。
いずれにしても、近時は個人情報の管理については個人情報保護法の法改正などもあり、より厳しい目を向けられているところです。
社員教育やセキュリティー対策など、情報管理が不十分であることが判明すれば、消費者や取引先は、重要な情報を開示することに不安を覚えるでしょう。結果として、取引が減少してしまい、企業経営に重大な悪影響を及ぼす可能性があるのです。 -
(4)食品衛生管理
食品販売業者や飲食店では、食品の衛生管理は重要であり、消費者も重大な関心を寄せています。
ひとたび衛生管理に問題が生じて、食中毒などが発生した場合には、行政によって営業停止などの処分が課せられることがあります。
また、業務停止が終了して営業が再開しても、一度信用を失った企業に消費者が戻ってくるとは限らず、そのまま廃業に至る場合もあるのです。 -
(5)誇大広告や表示偽装
商品や製品などの表示については、特別法で定められているものを除き、不当景品類及び不当表示防止法(「景表法」)によって規制されています。
商品やサービスを実際よりも著しく優良と誤認させる表示(「優良誤認表示」)や取引条件を著しく有利であると誤認させる表示(「有利誤認表示」)などをすることを規制しており、違反した場合には行政指導にとどまらず、課徴金などが課せられることもあります。
最近ではコロナウイルス感染症の流行もあり、コロナウイルスへの効果に関する優良誤認表示の事例が増加しております。
また、偽装事案としては、かつて食肉販売業者がコスト削減のため牛肉以外の部位も混ぜたにもかかわらず「牛肉100%」などと偽装して販売していた事例があります。この事例も、社内の内部告発によって発覚し、最終的に会社は倒産するに至りました。 -
(6)業法違反その他法令違反
業界や商品・サービスに応じてさまざまな法による規制があり、企業はこれらの業法を遵守しなくてはなりません(たとえば、「貸金業法」、「金融商品取引法」や「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」などがあり、「業法」と呼ばれています)。
また、下請法、独禁法、消費者契約法なども企業が遵守すべき重要な法令です。
これらの法律では、違反した場合には刑事罰が規定されているものもります。
独禁法では景表法と同じく違反した場合に、刑事罰に加えて多額の課徴金の支払いを命じられる場合もあります。
3、企業が行うべきコンプライアンス対策は?
以下では、コンプライアンス対策のための具体的な方法を解説します。
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(1)従業員教育
まず、会社役員や従業員個々人が、法令や社内規則を遵守することの重要性を学ぶコンプライアンス教育の実施があげられます。
コンプライアンスに違反した場合、会社の大きな損失につながることを自覚して、法令や社会規範を遵守することの重要性を役員や従業員が学ぶことが必要です。
さらに、たとえ大企業であったとしても、現場の従業員などが法令について十分な知識があるとは限りません。会社の法務部門や外部専門家が、法令の社内説明会や研修を開催するなど、従業員の法的な知識を向上させることも大切です。 -
(2)社内組織の整備
組織的なコンプライアンス遵守体制を構築するために、コンプライアンスの担当部門を設置するという方法があります。
前述した従業員教育や社内のコンプライアンスの推進と遵守状況の調査・確認といった業務を担当する部門を設けるということです。
また、社内でコンプライアンス違反があった場合には、早期にこれを発見し対応することが求められます。そのため、内部通報窓口やハラスメント窓口を設けることが重要なのです(2022年6月1日からは改正公益通報者保護法が施行され、従業員数300人を超える企業では窓口設置などの、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備が義務付けられました)。
さらに、社内の従業員が担当する窓口のほか、弁護士、法律事務所などの外部窓口を設置することも有効な方法となります。 -
(3)社内規定の見直し
社内規定や社内マニュアル、業務フローが、実は法令違反であったということは必ずしも珍しいことではありません。
これらの社内規定についてコンプライアンスの観点から見直し、必要に応じて改定を行うことが必要です。
この場合にも、弁護士に相談することで、幅広い法的見地からの検討が可能になります。
4、まとめ
コンプライアンス違反があった場合には、会社は社会的な信用を失い、経営を危機にさらしてしまうことがあります。
コンプライアンスを遵守する体制を構築するためには、従業員への教育、社内体制整備、規程類の整備など、幅広い対応が必要となります。また、万が一、コンプライアンス違反が実際に生じてしまった場合には損害賠償、刑事罰、行政処分などの法的なリスクを見通し、違反状況に適切に対応しなくてはなりません。
企業を守るためにも、コンプライアンス対策について、法律の専門家である弁護士に相談してアドバイスを求めることが重要です。
広島県福山市や近隣市町村で企業を経営されている方や担当者の方は、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスにまで、お気軽にご連絡ください。
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