特許が認められる期間や申請にかかる時間について解説

2022年09月26日
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特許が認められる期間や申請にかかる時間について解説

統計によれば、令和元年の広島県では2315件もの特許出願がありました。

企業の皆さまがせっかく製品やサービスを新たに発明しても、適切に特許を申請して、特許登録ができなければ、その発明は保護されません。また、特許が認められる期間についても限りがあります。ただし、保護期間は延長できる場合もあるのです。

本コラムでは、特許が認められる期間や申請の手続の流れ、申請にかかる時間について、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が解説いたします。

1、特許を認められる期間は20年

  1. (1)そもそも特許とは

    「特許」という単語は、日常的にもよく耳にすることがあるでしょう。

    特許とは、発明を保護するための制度です。その発明を独占的に実施(発明した物を使用したり、発明した物を譲渡したりするなど)することができる権利を特許権といいます。
    発明を全く保護しないのであれば、発明者の創意工夫は減退してしまうでしょう。その結果、国の発展にも悪影響を与えかねません。
    そこで「特許権」として独占的な権利を与えることで発明者を保護することが、特許という制度の目的です。
    また、「新規で有用な発明を国に開示した代償として、特許権が与えられる」という側面もあります。

    特許権は独占的な権利であるため、第三者が特許権を侵害したような場合には、特許権者は、差し止め請求や損害賠償請求などを行うことができます。

  2. (2)特許の期間

    特許を取得すれば発明を保護するための独占的な権利が認められますが、その期間は永久ではありません。
    特許権の期限は、特許法によって設定されています。原則として、特許を出願した日から20年間とされているのです(特許法第67条第1項)。

    特許権の存続期間の起算点(始期)は、特許の審査によって特許権が認められた日ではなく、特許の出願日である点に注意が必要となります。
    特許の審査には時間がかかるために、出願した日と特許権が認められた日(登録日)は大きく異なる場合があるためです。

    また、以下のような場合には、出願から20年を待たずに特許権が終了してしまいます

    ① 無効審判により特許が無効となったとき
    特許が認められた場合でも、無効審判によって特許権が無効とされる場合があります
    無効審判は、第三者によって特許庁に申し立てられるものです。
    無効審判の審査によって「本来はその発明に特許が認められる要件が備わってなかったにもかかわらず、誤って特許が認められてしまっていた」と判断されると、その際には、原則的に、特許は遡及(そきゅう)的に(もともと初めから認められなかったものとして)消滅することになります(特許法第125条)。

    ② 特許料を納めなかったとき
    法律上、特許権を維持するためには、特許料を納めることが必要になります。
    最初の3年間分については、審査によって特許が認められ特許の設定をするための登録料として支払うことになりますが、第4年以降の特許料は前年以前に支払わなくてはなりません。
    たとえば、第4年の特許料は、3年の期間が満了する前までに納付する必要があるのです。
    期間経過時でも追納期間が6カ月ありますが、この追納期間を経過しても納付しなかった場合には、期間経過時にさかのぼって特許権が消滅します(特許法第112条4項)

    ③ 放棄した場合
    特許権は、放棄することが可能です。
    上述したとおり、特許権を維持するためには、特許料を納める必要があります。
    そのため、利益を出す見込みがなくなったような特許権については、維持するコストを考慮して、放棄するという手段が選択されることもあるのです。
    特許権の放棄は、所定の書類を特許庁に提出するという方法で行えます。
    もっとも、実務的には、意図的に特許料を納めずに特許権を消滅させるという方法が採られることが多いといえます。

    ④ その他の消滅する事由
    以上のほかにも、独占禁止法第100条による取り消しや相続時に相続人が不存在であった場合(特許法第76条)や、特許異議申し立てにより取り消しが確定した場合(特許法第114条3項)においても、特許権は期限を待たずに消滅することになります。

2、期間が過ぎたら、その特許はどうなるのか

特許権の期限は、特許料の不納や放棄などをしない限りは、出願した日から20年間存続します。その期限が過ぎた場合には、特許権の独占的な権利が失われることになるのです
特許権が失われた後については、誰でも自由に「実施」することができるようになります。
「実施」とは、例えば物の発明であれば、その物の生産・使用・譲渡や貸し渡し、輸出や輸入をいいます。

また、特許権を有している間はその発明した製品などに「特許を取得している」などといった表記することができます。しかし、期限を過ぎてまでそのような表示をすることは禁止されているのです。
期限が過ぎたあとにも特許製品であることを表示する行為は「虚偽表示」として刑罰の対象になります(特許法第188条)。具体的には3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があるため、特許に関する表示についてはじゅうぶんに注意してください(特許法第198条)。

3、特許の延長は可能か

特許の期間は延長が認められる場合があります。
具体的には「特許庁の審査の遅延を理由とする延長(特許法67条2項)」と「政令処分を受けるために必要な期間の延長(特許法67条4項)」の2つの場合に、延長が認められているのです。

期限の起算点となる出願日とは、特許庁に願書を提出した日であり、郵送による場合は発信した日となります(特許法第19条)。
しかし、実際に特許権が権利として意味を持つのは、特許庁での審査が完了して特許の登録がなされてからとなります。
したがって、出願者には落ち度がなくとも特許庁における審査が不当に遅延してしまい、登録が遅れるような事態が起こってしまった場合には、その分だけ実際に特許権を実施できる期間が短くなってしまうのです。
このような理由から短くなってしまった期間を回復するために、「特許出願の日から5年を経過した日」または「出願審査請求から3年を経過した日」のどちらか遅い日以後に特許権の設定登録がされたときには、特許庁の不合理な審査により遅滞した期間を上限として、特許権の存続期間の延長が認められています。

また、医薬品などでは、厚生労働大臣の認可といった監督官庁の許可など、特許の審査とは別に長期間かかる手続きが必要とされる場合があります。
したがって、特許の実際の実施が可能となるまで時間がかかることが珍しくありません。
このような場合には、特許を実施できなかった期間を回復するために、20年の存続期間満了後5年を最大の上限として、その特許を実施できなかった期間の延長が認められています。

4、特許の申請の流れと必要な書類

以下では、特許の申請の手続きの流れや申請に必要な書類について、簡単に解説します。

特許の申請は法的には「特許出願」という言い方をされており、特許出願とは「特許を受けたいという意思表示を国家に対してすること」でもあります。
特許出願は書面主義になっており、特許を受けようとする発明は文書によって特定されます。

特許出願をする際には、願書に「特許請求の範囲」「明細書」「必要な図面」「要約書」を添付して出願します。
特に「特許請求の範囲」は出願人が保護を求めたい発明の範囲を記載して、特許権が与えられる対象となる発明を具体的に特定する、重要な書類です。
「明細書」には、発明の内容について、より詳細に説明を記載します。

特許の出願がされると、特許庁で審査が開始されて、特許が認められるかどうかの判断がされることになります
この審査については「方式審査」と「実体審査」の2段階で行われます。
「方式審査」は、書類に形式面でも不備がないかどうかを審査するものです。手数料の支払いの有無や、日本語で書面が記載されているのかといったことが審査されます。
このような形式的な要件に不備があった場合には、補正が命じられることになります。
方式審査は、出願されると自動的に行われます。

「実体審査」は、その発明の内容が特許を与えるにふさわしい内容であるのか、特許が認められる要件を備えている発明であるのか、といった点について審査するものです。
実体審査は、「出願審査請求」という請求があった場合に行われます。
実体審査請求は、出願人はもちろん、誰でも請求することが可能です。また、出願審査請求は出願日から3年間に限って行うことができ、3年を経過しても出願審査請求がない場合には、出願は取り下げとなります。

これらの審査の過程を経て、「特許の要件を備えている」と判断された場合には、特許が認められる「特許査定」となります。
その後、特許料納付などの手続きを経た後に、特許権が発生することになるのです。

もし「特許の要件を具備していない」と判断された場合には「拒絶査定」がなされてしまいます
この拒絶査定については不服を申し立てることもできます。それでも覆らない場合には、東京高裁に訴訟を提起することもできます。
なお、出願審査請求をしてから、処分(特許査定や拒絶査定など)が出るまでの平均的な審査期間は、令和2年度では15カ月でした。

5、まとめ

特許を出願してから処分が出るまでには、長い期間を要します。
また、特許の審査手続は複雑なものとなっています。
特許を出願する際には、まずは、出願時に提出する各種書類を適切に作成することが重要になります。
また、特許の存続期間の延長を求める必要があるかどうか、拒絶査定が出てしまった場合には不服を申し立てるべきかどうかを適切に判断するためには、特許法その他の法律・法的手続きに関する専門的な知識と経験は不可欠です。

ベリーベスト法律事務所では、弁理士の所属する特許業務法人ベリーベスト国際特許事務所とも連携しながら、特許出願に関する手続きをサポートしております
特許出願をご検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。

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