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試用期間中の本採用見送り(解雇)における注意点を解説

2021年06月24日
  • 労働問題
  • 試用期間
  • 本採用見送り
試用期間中の本採用見送り(解雇)における注意点を解説

本採用に先立って、新しい従業員の能力や資質を確認できるよう、多くの企業は「試用期間」を設けています。採用した後に、採用段階で見込んでいた力を備えていないことが明らかとなった場合には、試用期間中の解雇や、本採用の見送りを考える場合もあるからです。

この点について、「正式な雇用契約を結んでからは、従業員を解雇することが難しくなる」ということは広く知られています。では、試用期間内であれば、企業は自由に解雇を言い渡すことができるのでしょうか。

今回は、「試用期間」の法的な位置づけを確認したうえで、本採用前の解雇が可能となる条件や手続きにおいて企業が注意すべき点について、弁護士が解説していきます。

1、試用期間中または試用期間満了時の本採用見送り(解雇)は、一定の条件下で可能

試用期間とは、法律上、企業と従業員との間で、解約権留保付雇用契約が締結されている状態を指します。具体的に言うと、企業側から契約を解除できる権利を維持したまま雇用契約を結んでいる関係です。

企業側としては、採用時にできるだけ優秀な人材を採用しようとします。そのため、面接や試験などを行いますが、いくら採用に手間をかけても、相手の全てを知ることはできません。本当にその人に仕事に対する適性があるのか、スキルが足りているのか、会社の風土に合うのかなど、評価しきれないことも多いものです。

とはいえ、一度採用すると、日本の法制度ではなかなか従業員を解雇することができません。
そこで、採用のリスクを軽減するために導入されるのが試用期間制度です。

試用期間の間に、実際に職場で働いてもらいながら、採用した労働者の態度やスキルなどを確認し、本採用をするかどうか決めることができるのです。
本採用を見送る場合は、雇用契約の解約権を行使することになります。

なお、試用期間は必ず設けなければならないというものではなく、試用期間を設けるかどうかは企業側が自由に判断することができます
試用期間の長さについては法律で明確に定められた制限はありませんので、企業側が決定できます。
ただし、あくまで「試用」期間であるため、理由もなく長い期間を設定する場合、試用期間の規定自体が無効とされるおそれがあります。そのため、試用期間は2か月から6か月程度で設定されるのが一般的です。

企業に解約権があるとはいえ、自由に解約権を行使できるというわけではありません
実際に、試用期間の終了時に採用の見送りをする場合、法的には解雇と同様の扱いになります。

そのため、通常の解雇と同様に、解約権行使(解雇)するにあたっての正当な理由が必要です。解約権行使(解雇)に正当な理由がなければ、不当解雇として従業員に訴えられるリスクもありますので慎重な判断が必要です。

では、具体的にはどんな条件を満たせば、試用期間中または試用期間満了時の解約権行使(解雇)が認められるのでしょうか。試用期間における解約権行使(解雇)について裁判所の判断はどのようなものか見ておきましょう。

まず参考となるのは三菱樹脂事件(昭48.12.12最大判)です。まさに、試用期間における解約権行使(解雇)が問題となった事例です。
ここで裁判所が示した重要な見解は、「試用期間は従業員の適性を最終的に確かめるための期間ではあるものの、実際に雇用契約を解除できるのは、客観的かつ合理的な理由がある場合に限られる」という点です。

そもそも試用期間は、正式に採用する前に従業員の適性を判断し、場合によっては雇用契約を解除できるようにするための制度です。したがって、本採用した後の解雇に比べると、試用期間中の雇用契約の拘束性は低く、解約権行使(解雇)が認められる範囲は広くなるとされています。とはいえ、会社側が任意に解約権行使(解雇)できるわけではなく、あくまで「客観的かつ合理的な理由」が必要である点を押さえておきましょう

さらに、実際に解約権行使(解雇)する手続きも重要です。試用期間中または試用期間満了時に解約権行使(解雇)する場合でも、本採用後の解雇と同じように「30日前の解雇予告(試用期間開始後14日以内に解雇する場合を除く)」や「解雇事由の開示」といった義務が企業側に課されています。

試用期間付の雇用契約といえども、法的には既に雇用契約が成立しているため、手続きは本採用後の解雇と同様に手順を踏む必要があります。

なお、試用期間中の解約権行使(解雇)は、試用期間満了時の解約権行使(解雇)に比べて、より一層高度な合理性のある解雇理由が求められます。

2、本採用見送りが認められる可能性の高いケース

本採用の見送りが法的に有効だと判断されるためには、その判断をするに至った理由を客観的かつ合理的なものとして示す必要があります。では、一般的に本採用が見送られるケースとしてはどのような場合があるのでしょうか。

  1. (1)遅刻や欠勤が多い

    やむを得ない病気や怪我、そして出産などの事情がある場合を除き、欠勤や遅刻が多ければ解雇の正当な理由があるとして本採用の見送りが有効と判断される可能性が高いでしょう。

    また、病気や怪我による遅刻・欠勤であっても、本人の体調管理能力が著しく低い場合、たとえば、深夜まで遊び尽くして体調を崩すとか、飲酒量が多く二日酔いのために頭痛を起こして遅刻するなどの事情が重なっていれば、解雇の正当な理由があると判断される可能性があるでしょう。

  2. (2)本人の能力・スキル不足

    採用した人物が、どれくらい仕事ができるかは、実際に仕事に従事しなければわかりません。そして、実際に業務を開始した際、採用時に期待したほどの働きができないというケースはしばしばあります。

    企業からすると、人材はある程度の業務をこなせることを前提として採用しています。したがって、採用後に実は業務をこなす能力がなかったとなると、採用した意味がなくなってしまいます。そのため、本人の能力不足という事情は、本採用を見送る正当な理由となり得ます。

    ただし、能力不足は、客観的に示すことが難しい点に留意が必要です。解雇には、あくまで客観性と合理性が必要だからです。そこで、解雇する前に、本人の業務内容と、本人の実際にこなした仕事内容などを明らかにしておくこと、解雇する前に、十分に指導を行い改善の可能性がないことを明確にしておくこと、そして、これらを客観的な記録として残しておくことなどが重要です。

  3. (3)重大な経歴詐称

    履歴書や職務経歴書において申告された経歴や資格などがうそであった場合、解雇の事由として正当性が認められる可能性が高くなります。特に、一定の経歴や資格保有が採用の条件であった場合には、解雇の正当性が認められやすくなります。

    ただし、すべての詐称が解雇理由になるわけではありません。採用後の任務に全く関係のない経歴や、軽微なうそであれば、詐称があっても解雇できない場合もあります。

  4. (4)悪質な勤務態度や協調性の欠如

    仕事は他の従業員や顧客との関係の中で進められるものです。したがって、いくら仕事ができても、勤務態度が著しく悪い場合や、他の従業員と大きなトラブルを頻繁に起こすような場合は、職場全体にとって悪影響を及ぼす可能性があります。
    そのような場合には、協調性の欠如として正当な解雇事由として認められる場合があります。
    ただし、客観的な証明が難しいケースですので、企業側としては、本人に改善を求めたが改善が認められなかったという経緯を書類などで残しておくほうが安全です

  5. (5)犯罪・不当行為の発覚

    従業員が仕事に関係する犯罪行為を行った場合には、解雇事由として正当性が認められる可能性が高いでしょう。また、会社に損害を与えるような不法行為も解雇の理由になり得ます。たとえば、企業の重要な情報を漏えいした、会社の金品を横領したなどの場合には、正当な解雇事由にあたると考えられます。

3、試用期間の延長について

採用の時に設定した試用期間が経過しても、まだ本採用にするか判断できない場合もあります。もう少し様子を見てから判断したいというときです。
試用期間の延長は、就業規則などで延長の可能性およびその事由、期間などが明確に定められていない限り、試用期間中の労働者の不利益なものとなるため、無効とされています。

4、試用期間中の本採用見送りにおける手順

前述の通り、試用期間中や試用期間満了時に採用の見送りや取り消しをする場合は十分な正当理由が必要です。

  1. (1)試用期間開始から14日以内の場合

    労働基準法第21条の規定により、試用期間の開始から14日以内に解雇する場合、会社は従業員に対して解雇予告や手当などをする義務はなく、即日解雇ができるという特例があります。

    ただし、14日以内なら予告の必要がないとは言っても、14日間以内なら自由に解雇できるというわけではありません
    解雇の正当な理由が認められないような解雇については、不当解雇と見なされる場合もあるので注意が必要です。また、従業員側から解雇理由を求められた場合には、会社側は解雇事由を明示しなくてはなりません。

  2. (2)試用期間開始から14日以上の場合

    試用期間開始から14日間が経過した後は、本採用後の解雇と同様に解雇の日の「30日前」までに解雇を予告しなければなりません。試用期間解雇の事前通告は、明確に伝えなければなりません。

    たとえば、「このままの態度だと、本採用は難しいかもしれない」などの言い方では、解雇の予告とは認められません。このような言い方では解雇が認められず、トラブルにもなりがちです。そこで、試用期間でも、解雇事前通知書などの書面を提示することでトラブルを防ぐことができます

    なお、30日前までの予告をせずに解雇することもできます。この場合、企業は解雇する従業員に対して「解雇予告手当」を支払わなければなりません。この手当の額は、「30日分以上の平均賃金」と定められています。

5、まとめ

試用期間であっても企業と従業員の間には雇用契約が結ばれているため、解雇には合理的な理由が必要です。また、解雇によるトラブルを防止するうえで必要なのは、試用期間中の取り扱いについて、採用の時点で従業員に十分に説明をしておくことです。

就業規則を整備することはもちろん、従業員の認識と会社側の認識がずれることのないように、説明を尽くすことが求められます。実際に解雇を検討する場合は、事前準備や法的な手続きまで会社側に課せられた義務を正しく履行する必要があります。解雇トラブルは会社にとって痛手となりますから、事前に弁護士などに相談し、万全の体制で臨むようにしましょう。
ベリーベスト法律事務所 福山オフィスでは、試用期間中の雇用契約をはじめ、従業員問題に関わる企業法務のご相談をお受けしております。お困りの際は、弁護士までぜひご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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