配偶者の弁護士から受任通知が届いた場合の、正しい対応方法と注意点
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福山市が公表している人口動態の統計資料によると、令和2年の福山市内での離婚件数は、739件でした。同年の福山市内の離婚率は1.62であり、広島県の離婚率(1.54)および全国の離婚率(1.57)を上回っていました。
離婚の話し合いを進めていると、突然、配偶者が依頼した弁護士から受任通知が届くことがあります。いきなり弁護士から書面が届くと、驚いてしまう方も多いでしょう。
本コラムでは、配偶者の弁護士から受任通知が届いた場合の正しい対応方法と注意点について、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚協議中に届く受任通知とは?
まず、そもそも受任通知とはどのような書面であるのか、概要を解説します。
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(1)受任通知とは
受任通知とは、依頼を受けた弁護士が紛争の相手方に対して最初に送る書面です。
「弁護士が就いた」という事実を相手に知らせるための書面になります。
夫婦で離婚の話し合いをしていたとしても、夫または妻が弁護士に依頼をした場合には、弁護士から相手に対して受任通知が送られることになります。
弁護士から受任通知が届いたということは、それだけ、相手の離婚意思が固いということを意味します。
そのため、「離婚を考え直してもらうことは難しい」と考えなければならないでしょう。 -
(2)受任通知の目的
弁護士が紛争の相手方に受任通知を送る目的としては、依頼者と相手方との直接のやり取りを避けて、弁護士を交渉の窓口にするということが挙げられます。
依頼者から依頼を受けた弁護士は、速やかに相手方に受任通知を送付し、今後の交渉の窓口を自分(弁護士)に指定します。
したがって、「弁護士から受任通知が届いた後は、相手と直接話し合いをするのは難しい」と理解しておきましょう。
2、弁護士から受任通知が届いた場合に気をつけるべきこと
弁護士から受任通知が届いた場合には、以下の点に注意が必要です。
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(1)配偶者に直接連絡をしない
弁護士から受任通知が届いたら、それ以降は、離婚に関する話し合いの窓口がすべて相手の弁護士となります。
受任通知にも「今後の連絡は、すべて弁護士を窓口としてください」などと記載されているはずなので、何か話がある場合には、弁護士に連絡をするようにしましょう。
なお、「弁護士を窓口にしてください」というのはあくまでも、弁護士からお願いですので、強制力はありません。
したがって、直接配偶者に連絡をしたとしてもペナルティを受けるわけでもありません。
しかし、弁護士が就いているにもかかわらず、直接配偶者に連絡を取ろうとすると、相手の態度が硬化して、今後の話し合いが困難になってしまいます。
そのため、配偶者に連絡することは、基本的には避けた方がよいでしょう。 -
(2)弁護士からの連絡を無視しない
受任通知の内容が、単に「弁護士が就いたこと」を知らせるものであった場合には、特別な対応は必要ありません。
しかし、受任通知に離婚に関する具体的な希望や条件などが記載されており、それについての回答を求められている場合には、期限までに回答をする必要があります。
期限までに回答することが難しい場合には、回答する意思があることを書面で示しつつ、期限の延長を求めるとよいでしょう。
弁護士からの連絡を無視していると、話し合いによる解決が困難だと判断されてしまい、家庭裁判所に離婚調停を申し立てられる可能性がある点に注意してください。 -
(3)相手の要求にすぐに応じない
受任通知に回答をする場合には、自分だけで判断するのではなく、すぐに自分でも弁護士に相談をすることが大切です。
相手に弁護士が就いているからといって、相手の弁護士から提示されている離婚条件が適正なものであるとは限りません。
相手の要求にすぐに応じてしまうと、不利な条件による離婚が成立してしまう可能性があるため、一旦は回答を保留して、弁護士に相談をするようにしましょう。
3、配偶者に弁護士がついた時、自分も弁護士に依頼するべき?
配偶者に弁護士が就いた場合には、ご自身の方でも弁護士に依頼をすることをおすすめします。
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(1)調停や裁判にまで発展する可能性が高い
離婚の方法としては、主に、話し合いによる協議離婚の方法がとられています。
しかし、当事者同士の話し合いで解決することができない場合には、家庭裁判所の離婚調停や離婚裁判を利用することになります。
配偶者が弁護士を依頼したということは、当事者だけの話し合いでは解決が難しいと判断した可能性があります。
そのため、今後、離婚調停や離婚裁判にまで発展する可能性もあるのです。
調停や裁判にまで発展するとひとりで対応することは困難になるため、早めに弁護士に依頼して、サポートしてもらうとよいでしょう。 -
(2)不利な条件で離婚をしてしまうリスクがある
弁護士は、豊富な経験や法律の知識を有しているため、一般の方と弁護士との間には、圧倒的な交渉力の差があります。
離婚をする場合には、離婚をするかどうかだけではなく、親権、養育費、財産分与、慰謝料などの離婚条件についても具体的に定める必要があります。
しかし、交渉力に差があると、不利な離婚条件に応じてしまうリスクがあるのです。
配偶者が弁護士に依頼をしているのであれば、こちらも弁護士に依頼をしなければ、対等な立場で交渉を進めるのは難しくなるでしょう。 -
(3)弁護士でなければ正当な要求であるかを判断できない
配偶者の弁護士から法的根拠に基づいてさまざまな条件の提示を受けると「弁護士が言っているなら妥当な条件だろう」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、配偶者の弁護士は、あくまで配偶者の利益を守るために行動していますので、夫婦双方にとって妥当な離婚条件を提示しているとは限りません。
弁護士に依頼すれば、相手から提示されている条件が妥当なものであるかどうかを判断することができます。
そして、不当な条件であった場合には、適切な条件に近づけるように交渉を進めることもできるのです。
4、離婚を進めるにあたり考えるべきこと
離婚を進めるにあったっては、以下の点について考えていく必要があります。
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(1)希望する離婚条件を考えておく
離婚をする場合には、親権、養育費、財産分与、年金分割、面会交流などの離婚条件を決めていく必要があります。
このような離婚条件について話し合いをする場合には、自分が希望する条件を明確にしておくことによって、話し合いをスムーズに進めることができます。
配偶者側と離婚条件のすり合わせをするときに備えて、「絶対に譲歩できない条件」と「譲歩してもよい条件」を分けて検討しておきましょう。
条件を分けておくことによって、相手との交渉を有利に進められる可能性もあります。 -
(2)子どもがいる場合には子どもへの影響にも配慮が必要
夫婦に子どもがいる場合には、親権者をどちらにするのか、離婚後の養育費をいくらにするのかなどを考えていかなければなりません。
父親であっても母親であっても、「子どもと一緒に生活をしたい」と考えるのは当然ですが、自分の気持ちだけではなく、子どもの意向や影響なども配慮して親権者を決めることが大切です。
離婚によって、少なからず子どもには精神的なストレスがかかりますので、離婚後に引っ越しや転校などによって環境が大きく変わるのはできる限り避けた方が望ましいでしょう。
親権を獲得することができなかったとしても、面会交流を充実した内容にすることによって、離婚後も子どもと過ごす時間を確保することができます。
親権だけに固執するのではなく、子どもへの影響にも配慮して柔軟な思考で対応することが大切です。 -
(3)住宅ローンが残っている場合の処理
戸建て住宅やマンションを購入し、住宅ローンが残っている場合には、誰が自宅に住むのか、自宅の名義をどうするのか、住宅ローンは誰が支払っていくのかなどさまざまな問題が生じることになります。
これらの問題は、主に財産分与によって処理していくことになりますが、きちんと取り決めをしておかなければ、離婚後もトラブルが生じる原因になってしまいます。
住宅ローンが残っている場合の財産分与の扱いは、非常に複雑な処理となりますので、専門家である弁護士のサポートを受けましょう。
5、まとめ
配偶者の弁護士から受任通知が届いた場合には、今後の交渉は配偶者の弁護士を相手にして行っていかなければなりません。
しかし、一般の方と弁護士とでは、知識や経験、交渉力に圧倒的な差がありますので、そのままでは不利な条件で離婚が成立してしまうリスクがあるのです。
適切な条件での離婚を成立させるために、こちらも弁護士に依頼をして交渉を進めていくことが必要になります。
配偶者の弁護士から内容証明などで受任通知が届いた場合には、早めに弁護士に相談しましょう。
離婚に関する問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています