婚姻費用の決め方は? 含まれるものや含まれないもの、注意点を解説

2025年02月17日
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婚姻費用の決め方は? 含まれるものや含まれないもの、注意点を解説

厚生労働省が公表している「令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、都道府県別離婚率は、広島県は1.53(人口千対)であり、47都道府県の中でも12番目に高い都道府県となりました。

離婚に先立って別居をした場合、婚姻費用の請求が可能ですが、金額はどのように決められることになるは気になるところです。この記事では、婚姻費用の疑問点について、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が解説します。

1、婚姻費用の決め方とは?

夫婦には、互いに扶助義務があるため(民法第752条)、「婚姻から生ずる費用を分担する」義務が定められています(同第760条)。一般的に婚姻費用は、収入が多い側や子と同居していない側から収入が少ない側や子と同居している側に支払われます

それでは、婚姻費用については、どのように決めれば良いのでしょうか。

  1. (1)夫婦間の話し合い

    婚姻費用については、基本的には夫婦が話し合って決めます。

    「婚姻費用」には、家賃や食費などの生活費のほかに、病気やケガ、出産にかかる費用や、子どもの学費などの教育費も含まれています。

    これらの費用は生活を送るうえで欠かせないものなので、支払われるべき金額を月額で決めたら、合意書を作成しておきましょう。

    婚姻費用に関する合意書については、公正証書の形で残しておくことがおすすめです(詳細は3章)。公正証書に、強制執行認諾文言を入れておくことで、婚姻費用を回収しやすくなります。

  2. (2)婚姻費用算定表を用いる

    配偶者に適切な婚姻費用を請求する場合には、婚姻費用算定表を活用しましょう。算定表は、家庭裁判所のWEBサイトにおいて誰でも自由に閲覧可能です。

    算定表では夫婦の収入や、子どもの人数・年齢などに合わせて標準的な婚姻費用の金額を調べることができるので、より具体的な金額を算定することが可能です。

  3. (3)話し合いがまとまらない場合は調停・審判を利用する

    配偶者との話し合いがまとまらない場合には、婚姻費用分担調停や審判を申し立てることになります。

    調停手続とは、申立人と相手方が話し合いで納得して合意することを目指す手続きです。

    調停手続では、家庭裁判所の裁判官1名と、その分野に専門的な知見のある人の中から選ばれた調停委員2名以上で構成される調停委員会が立ち会います。両当事者から主張や言い分を聞き、客観的な立場からアドバイスをもらえます。

    調停手続により話し合いが成立すれば、調停調書が作成され、不成立の場合には裁判官が審判によって判断を下します。

2、算定表による婚姻費用の月額に含まれるもの・含まれないもの

ここでは、婚姻費用の算定表において考慮されているもの・考慮されていないものについて具体的に解説していきます。

  1. (1)婚姻費用算定表で考慮されているもの

    通常夫婦が共同生活をしていくうえで必要となる経費については、婚姻費用の算定表において考慮されています。

    婚姻費用の算定表で考慮されている経費として、以下のようなものがあります。

    • 食費や水道、光熱費、衣類にかかる費用
    • 家賃、住宅ローン返済など住まいを維持するのに必要な費用
    • 子どもが保育園や学校に通うために必要となる教育費
    • 通院費、治療費などの医療費
    • 常識的に必要と考えられる範囲の交際費や娯楽費
    など
  2. (2)婚姻費用算定表で考慮されていないもの

    生活に必要なものであるとしても、一時的に大きな支出を伴う経費については、婚姻費用の算定表では考慮されていません。

    婚姻費用の算定表で考慮されていない経費としては、以下のようなものが挙げられます。

    • 子どもが私立学校・大学・専門学校等へ進学するための入学費や学費
    • 病気やけがによる高額な治療費
    • 過剰な娯楽費
    • 離婚に関する法的な費用
    など


    子どもの養育に必要となる経費については、基本的な衣食住、医療費などのほか、公立学校に進学した際の授業料や諸経費といった「標準的な学費」が含まれています。この「標準的な学費」とは、高校まで公立学校に通った場合の学費相当額のことを指します。

    そのため、私立学校や大学・専門学校等への入学金や学費、通学のための下宿代などについては、含まれません。

3、婚姻費用を決める際の注意点

婚姻費用の取り決めを行う際に、注意しておくべきポイントがあります。

婚姻費用を確実に受け取れるように合意しておくことが重要ですが、そもそも婚姻費用を請求できないケースもあるため、以下で解説していきます。

  1. (1)夫婦間の合意内容を記載した公正証書を作成する

    夫婦間の話し合いで婚姻費用について合意できても、のちのち支払いを拒否されたり勝手に減額されたりするリスクがあります。

    そのため、「公正証書」を作成しておくことをおすすめします。公正証書とは、公証役場で公証人に作成してもらう契約書のことで、夫婦が離婚する際、離婚に関する各種取り決めを書面で作成し、それを公証役場に持ち寄ることで作成してもらうことができます。

    公正証書には、以下のようなメリットがあります。

    • 内容の信用性が高い
    • 強制執行ができる場合がある
    • 紛失や改ざんを防止できる


    また、公正証書に「強制執行認諾文言」という条項を入れておくことで、すぐに強制執行の手続きに入ることができます。

    つまり、支払うべき婚姻費用の金額と、「債務者が金銭の支払をしないときは、直ちに強制執行に服する」という内容が記載されていれば、別途裁判を起こさなくとも、相手方の財産を差し押さえることができます

  2. (2)婚姻費用を請求できないケースがあることに注意する

    以下のようなケースでは、婚姻費用の請求ができない可能性があるため注意が必要です。

    • 自分が婚姻関係の破綻や別居の原因を作った場合
    • 相手よりも収入が多い場合
    • 相手に支払い能力がない場合
    など

4、婚姻費用に関する問題を弁護士に相談するべき理由

婚姻費用に関してお悩みの場合には、夫婦トラブルの解決実績がある弁護士に相談することをおすすめします

弁護士は、事情に応じた適切な対応や、婚姻費用の算定を行います。また、別居・離婚にあたっては、婚姻費用の問題だけでなく、親権者の決定、養育費や面会交流の取り決め、財産分与・年金分割、慰謝料の支払いなど、さまざまな問題を解決するサポートやドアドバイスを受けられます。

また、離婚を検討されている場合、夫婦の関係性が悪化し、直接のやり取りにストレスを感じるという方も少なくありません。弁護士が代理人として対応することで、当事者同士でやり取りするよりもスムーズに話し合いを進められる可能性もあります。

さらに、話し合いでは解決できない場合、調停や審判手続きに移行することになりますが、早い段階で弁護士に依頼しておくことで、スムーズな対応が期待できます。必要書類の提出や裁判所対応についても適切なサポートを受けることができるでしょう。

5、まとめ

婚姻費用の決め方については、夫婦が話し合いで決定することができますが、まとまらない場合には、弁護士に間に入ってもらって進める方が良いでしょう。

もし話し合いでまとまらない場合には、調停や審判手続きを活用していくことになります。
早い段階で、婚姻費用に含まれる費用・含まれない費用について理解を深めておくことは、適正な請求につながるでしょう。また、確実に婚姻費用を受け取るためにも公正証書の作成が重要です。

適切に公正証書を作成するためには、離婚問題の実績がある弁護士への相談がおすすめです。ベリーベスト法律事務所 福山オフィスには、離婚トラブルの解決実績がある弁護士が在籍しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています