離婚時の持ち家問題|夫が住み続ける場合の手続きと妻の権利

2025年06月30日
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離婚時の持ち家問題|夫が住み続ける場合の手続きと妻の権利

結婚して自宅を購入した夫婦が離婚する場合、持ち家をどのように処理するのかという問題が発生します。

離婚後も夫が住むという方法も選択肢のひとつになりますが、自宅は財産分与の対象に含まれますので、夫が住む場合、妻に対して財産分与が必要になります。特に「住宅ローンが残っている」「妻が連帯保証人になっている」というケースでは、問題がさらに複雑になります。

今回は、離婚時の持ち家問題のうち夫が住み続ける場合の手続きと妻の権利についてベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が説明します。


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1、離婚時の持ち家問題|夫が住む場合の基本と注意点

持ち家がある夫婦が離婚する場合、持ち家の問題を処理しなければなりません。以下では、持ち家問題を解決する方法と離婚後も夫が住む場合のメリット・デメリットについて説明します。

  1. (1)離婚時の持ち家問題を解決する方法

    結婚してから持ち家を購入した場合、持ち家は、夫婦の共有財産に含まれますので、離婚時の財産分与の対象になります。

    持ち家の財産分与の方法としては、主に以下の4つの方法があります。

    ① 持ち家を売却して得たお金を分ける方法
    ② 持ち家を共有名義にする方法
    ③ 持ち家に夫が住む方法
    ④ 持ち家に妻が住む方法


    このうち、本コラムでは「③ 持ち家に夫が住む方法」を選択した場合について解説していきます。

  2. (2)離婚後も夫が持ち家に住む場合のメリット・デメリット

    離婚後も夫が持ち家に住む方法には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下で詳しく説明します。

    ① 離婚後も夫が持ち家に住む場合のメリット
    離婚後も夫が持ち家に住む場合の夫側のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

    • 名義変更が不要なケースが多い
      持ち家を購入する場合、収入の多い夫が住宅ローンを組み、夫名義の持ち家・住宅ローンにするケースが多いです。このようなケースでは、離婚後も夫が持ち家に住む場合、持ち家や住宅ローンの名義変更が必要ありませんので、手続き的な負担がほとんどない点がメリットといえます。

    • 引っ越し費用がかからない
      離婚後も夫が持ち家に住むなら、夫は、自宅を出ていく必要がありませんので、引っ越し費用、新居の初期費用などがかかりません。そのため、離婚時の経済的負担を抑えることができるというメリットがあります。


    ② 離婚後も夫が持ち家に住む場合のデメリット
    離婚後も夫が持ち家に住む場合の夫側のデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

    • 一人で住むには広すぎる
      妻や子どもと一緒に生活することを前提に持ち家を購入した場合、それなりの広さがありますので、離婚後一人で生活するには広すぎると感じるかもしれません。
      単身用のアパートに比べるとローン(家賃)の負担は大きく、水道光熱費や固定資産税の負担などもあるため、経済的な負担も重くのしかかってきます

    • 夫婦の収入合算でローンを利用した場合、ローン返済の負担が重くなる
      夫の収入だけではなく、夫婦の収入合算でローンを利用すれば、より多くの住宅ローンを借りることができます。
      しかし、離婚をして夫が持ち家に住む場合、基本的には夫のみで住宅ローンの返済をしていかなければなりませんので、月々のローン返済の負担が重くなってしまいます。収入のほとんどを住宅ローンの返済に回さなければならず、生活に余裕がなくなってしまう可能性があります。

2、離婚後も夫が持ち家に住むケースにおける妻の権利

離婚後も夫が持ち家に住む方法を選択した場合、妻は、どのような請求をすることができるのでしょうか。以下では、家を出ることにした妻が夫に対して請求できる権利について説明します。

  1. (1)夫が持ち家に住む場合、妻は財産分与を請求できる

    夫が持ち家に住む場合、妻は夫に対して財産分与を請求することができます

    財産分与とは、離婚時に夫婦の共有財産を分け合う制度のことをいい、対象となる財産には、持ち家以外にも婚姻中に築いた以下のようなものが含まれます。

    • 現金、預貯金
    • 保険
    • 有価証券
    • 退職金
    • 住宅ローンや教育ローンなどの負債


    財産分与の割合は、基本的には2分の1ずつですので、夫が持ち家という高額な財産を取得した場合、妻は持ち家以外の財産のほとんどをもらえる可能性があります。

  2. (2)住宅ローンが残っている場合の注意点

    財産分与の対象には、プラスの財産だけではなく住宅ローンのようなマイナスの財産も含まれます

  3. (3)妻が財産分与を請求する流れ

    妻が財産分与を請求する場合の流れは、以下のとおりです。

    ① 財産の調査
    財産分与をするには、まずは対象なる財産を調査することから始めます。
    自分の名義の財産であれば調査は簡単ですが、財産分与をでは相手の名義の財産も調べなければなりません。夫にお願いしても素直にすべての財産を開示してくれるとは限りませんので、あらかじめ夫の財産を調べておくようにしましょう

    ② 財産の評価
    財産分与の対象となる財産が確定したら、次は、財産の評価を行います。
    財産評価で特に問題になるのが土地や建物などの不動産の評価です。不動産は、現金や預貯金のように評価方法が一律ではないため、どのような評価方法を採用するかによって金額が大きく変動します。
    持ち家を評価する場合には、複数の不動産会社から査定をしてもらうことが大切です。

    ③ 財産分与の方法について話し合い
    財産調査および財産評価ができたら、夫と話し合いをして財産分与の方法について決定していきます。
    夫が持ち家に住む場合には、妻がその他の財産を取得するケースが多いため、離婚後の経済的な不安を和らげるためにも適正な財産分与を求めていきましょう。

    ④ 合意できたら離婚協議書にまとめる
    離婚および財産分与に関する合意ができたら、離婚協議書を作成して合意内容を記載します。口約束だけではトラブルになるリスクがありますので、必ず書面を作成するようにしてください。
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3、住宅ローンの名義変更と連帯保証人はどうなる?

住宅ローンが残っている場合、住宅ローンの名義変更と連帯保証人の問題を処理しなければなりません。この問題は住宅ローンの種類によって対応が異なりますので、以下では、住宅ローンの種類ごとの対応方法を説明します。

  1. (1)夫名義の住宅ローンの場合|名義変更不要

    住宅ローンが夫名義になっていて、離婚後も引き続き住宅ローンを夫が支払っていくのであれば、住宅ローンの名義変更は不要です。

    ただし、妻が連帯保証人になっている場合、妻から「連帯保証人を外してほしい」という要求が出ることがあります。連帯保証人を外すには金融機関の同意が必要になりますが、離婚をしたという事情だけでは連帯保証人を外すことはできません。代わりの連帯保証人を用意できた場合などに、妻は連帯保証人から外れることができます。

  2. (2)ペアローンの場合|名義変更必要

    ペアローンとは、夫婦それぞれが住宅ローンを組む方法です。ペアローンでは夫婦それぞれが主債務者になり、相手の連帯保証人になるのが特徴です。

    ペアローンの場合、夫名義のローンについては、妻を連帯保証人から外す手続きが必要になり、妻名義の住宅ローンについてはローンの名義変更が必要になります。

    ただし、金融機関は簡単にはローンの名義変更には応じてくれませんので、住宅ローンの借り換えが選択肢の一つとなります。もっとも、住宅ローンの残額によっては、夫だけの収入では満額の借入ができない可能性もあります。

  3. (3)連帯債務型の住宅ローンの場合|名義変更必要

    連帯債務型の住宅ローンとは、夫婦のどちらか一方を主債務者とし、他方を連帯債務者として住宅ローンを借りる方法です。夫婦の収入を合算して借りることができるという点ではペアローンと共通しますが、連帯債務型の住宅ローンは1つの契約で住むのに対して、ペアローンは夫婦それぞれが別々のローンを組むのが特徴です。

    連帯債務型の場合、妻を連帯債務者から外す手続きが必要になります。収入合算で借りていますので、金融機関は離婚したという事情だけでは連帯債務者を外すことに同意してくれません。そのため、住宅ローンの借り換えの手続きが必要になりますが、夫の収入だけでは満額の借入ができない可能性もあります。

4、安定した新生活を送るためにも弁護士に相談を

持ち家や住宅ローンがある状態で離婚をする場合、持ち家や住宅ローンの処理に関してトラブルになる可能性がありますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)夫が持ち家に住む場合の手続きについてアドバイスを受けられる

    離婚後、持ち家に夫が住む場合、住宅ローンや連帯保証人の問題を処理しなければなりません。どのような処理が必要になるかは、具体的な状況によって異なりますので、適切な対応をするためにもまずは弁護士に相談することが大切です。

    離婚問題に強い弁護士であれば、持ち家や住宅ローンの処理のポイントを踏まえ、事案に応じた適切なアドバイスが可能です。

  2. (2)妻が適正な財産分与を確保するためのサポートが受けられる

    持ち家に夫が住む場合、妻は、夫に対して財産分与を請求することで、離婚後安定した生活を送ることが可能になります。

    弁護士に依頼すれば財産の調査や評価の手続きを任せられますので、適正な財産分与を実現できる可能性が高くなります。また、財産分与以外の離婚や慰謝料、親権や養育費などの問題もすべて任せることができますので、有利な条件での離婚が期待できます。

5、まとめ

持ち家を購入した夫婦が離婚するときは、家の処分をどうするかを考えなければなりません。離婚後も持ち家に夫が住むのであれば住宅ローンや連帯保証人の問題を処理しなければならず、それがきちんと処理できないと財産分与の話し合いは進展しないでしょう。

離婚や財産分与の話し合いをスムーズに進めるには弁護士のサポートを受けることが役立ちます。お困りの際は、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています