認知準正とはどんなこと? 非嫡出子から嫡出子になることで相続は変わる?

2023年06月12日
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認知準正とはどんなこと? 非嫡出子から嫡出子になることで相続は変わる?

法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもは、非嫡出子になります。非嫡出子であっても、父親から認知を受ければ、法律上の親子関係が生じますので、父親の遺産を相続することができます。

また、非嫡出子を認知するだけでなく、嫡出子としての身分を与えるためには、「準正」という手続きが必要になります。非嫡出子にも相続権はありますが、準正によって嫡出子になると、相続分に変化が生じる可能性があります。

本コラムでは、準正により非嫡出子から嫡出子になった場合に相続に生じる変化などについて、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が解説します。

1、準正とは

まず、準正という制度の概要から解説します。

  1. (1)準正とは?

    「準正」とは、非嫡出子が嫡出子としての身分を取得することをいいます

    法律上、子どもには、実子と養子がいます。
    実子は、さらに嫡出子と非嫡出子に区別されます。
    「嫡出子」とは、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どものことを指します。一方で「非嫡出子」は、法律上の婚姻関係にない男女から生まれた子どものことです。

    非嫡出子であっても、母親との関係については、「出産した」という事実から当然に相続権が認められます。
    しかし、父親との関係については、そのままの状態では相続権は認められません。父親の相続人として、遺産を相続するためには、父親から「認知」を受ける必要があるのです。

    認知によって、非嫡出子であっても父親の遺産を相続することができますが、身分はあくまで非摘出子のままです。
    非嫡出子に嫡出子としての身分を与えるためには、準正を行う必要があります

  2. (2)準正の種類

    準正には、「婚姻準正」と「認知準正」という二つの方法があります
    婚姻準正とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に子どもが生まれた後に、父親が子どもを認知して、その後、父親と母親が婚姻することで嫡出子の身分を取得する方法です。
    認知届の提出後、婚姻届を提出すれば子どもは嫡出子の身分を取得します。

    認知準正とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に子どもが生まれた後に、父親と母親が婚姻をして、その後、父親が子どもを認知することで嫡出子の身分を取得する方法です。
    婚姻届の提出後、認知届を提出すれば、子どもは嫡出子の身分を取得します。

    婚姻準正と認知準正は、どちらも「認知」と「婚姻」が必要になりますが、認知が先か婚姻が先かという点で区別されます

2、非嫡出子と嫡出子で相続は異なる?

以下では、相続において非嫡出子と嫡出子との間に生じる差について解説します。

  1. (1)非嫡出子が認知されていなかった場合

    非嫡出子であっても、母親との関係については、相続権が認められます
    また、母親が死亡した場合には、嫡出子と同様に母親の遺産を相続することができます。
    この場合の相続割合は、非嫡出子と嫡出子との間で差はありません。

    しかし、非嫡出子は、父親との関係については、当然には親子関係は認められません
    父親との間で法律上の親子関係を生じさせるためには、認知をする必要があります。
    逆にいえば、父親から認知をされていない非嫡出子は父親の子どもにはあたらないので、父親の遺産を相続する権利を持たないのです。
    このように、非嫡出子が認知されていなかった場合には、父親の相続において嫡出子との間に大きな差が生じることになります。

  2. (2)非嫡出子が認知されていた場合

    非嫡出子が父親から認知されていた場合には、父親との間に法律上の親子関係が生じます。そのため、嫡出子と同様に非嫡出子も父親の遺産を相続する権利を取得します。

    過去には、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定がありましたが、最高裁の決定によりそのような差別は違憲であるとの判断を受けて、平成25年(2013年)に法改正が行われました。
    現在では、非嫡出子と嫡出子の相続分は同じ割合になっています。

    ただし、相続が発生した時期によって、非嫡出子と嫡出子の相続分が異なるという点には注意してください。
    具体的には、相続が発生したのが平成12年(2000年)9月の前後であるかによって、相続分が変わってくるのです

    ① 平成12年9月以前に相続が発生した場合
    非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の2分の1になります。

    ② 平成12年10月から平成13年6月30日までに相続が発生した場合
    すでに遺産分割が終了している事案に関しては、非嫡出子と嫡出子との相続分に差があってもその効力は覆らないと考えられます。
    しかし、遺産分割未了の事案については確定的な判断がされておらず、令和5年の時点でもグレーゾーンとなっています。

    ③ 平成13年7月1日から平成25年9月4日までに相続が発生した場合
    遺産分割未了の事案については、非嫡出子と嫡出子の相続分は等しいものとして扱われます。
    すでに遺産分割が終了している事案に関しては、非嫡出子と嫡出子との相続分に差があっても、その効力は覆らないと考えられます。

    ④ 平成25年9月5日以降に相続が発生した場合
    この日付から改正民法が適用されるため、非嫡出子と嫡出子の相続分は同じになります。

3、異母・異父兄弟の場合は相続が異なる

以下では、異母・異父兄弟が相続人になる場合と通常の兄弟姉妹が相続人になる場合とで、どのような違いがあるのかを解説します。

  1. (1)異母・異父兄弟にも相続権はある

    異母兄弟とは、母親を異にする兄弟姉妹のことをいいます。異父兄弟は、父親を異にする兄弟姉妹のことです。

    離婚や再婚を繰り返している場合には、異母・異父兄弟が生じることも珍しくありません。
    異母・異父兄弟であっても、親が亡くなった場合には被相続人の「子ども」であることには変わらないため、当然に相続権は認められます。
    また、兄弟姉妹が亡くなった場合にも被相続人の「兄弟姉妹」であることに変わりありませんので、同じく、当然に相続権が認められるのです。
    そのため、相続権の有無という点では、異母・異父兄弟と通常の兄弟姉妹との間に違いはありません

  2. (2)異母・異父兄弟では相続分が異なる場合がある

    異母・異父兄弟と通常の兄弟姉妹とでは、相続分が異なる場合がある点には注意してください。

    被相続人が親である場合には、異母・異父兄弟であっても「子ども」であることに変わらないため、異母・異父兄弟と通常の兄弟との間の相続分は同じです。
    しかし、被相続人が兄弟姉妹で、その兄弟姉妹が相続人になる場合には、異母・異父兄弟とその他の兄弟姉妹との間の相続分が変わってきます。
    異母・異父兄弟は、他の兄弟とは異なり父または母の片方のみを同じくする関係であるため、異母・異父兄弟の相続分は、父母を同じくする兄弟の相続分の2分の1となるのです。

4、相続のお悩みは弁護士に相談

遺産相続に関するお悩みは、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)非嫡出子がいる場合の相続についてサポートを受けられる

    非嫡出子は、婚姻関係にない男女から生まれた子どもです。
    婚姻に至らなかったのにはさまざまな事情があるでしょう。
    もし不倫や浮気によってできた子どもだと、家族にその存在を知らせていない場合もあります。

    非嫡出子であっても父親から認知をされれば、嫡出子と同様に遺産を相続する権利があります。
    そのため、非嫡出子も含めて、遺産分割協議を進めていかなければなりません。
    しかし、今まで顔を合わせたこともなかった非嫡出子が突然話し合いに参加することになれば、トラブルが生じる可能性も高いでしょう。

    当事者同士で話し合いを行うと、どうしても感情的になってしまいがちです。
    トラブルを予防しながら遺産分割を進めるために、専門家である弁護士に依頼して、遺産分割協議のサポートを受けましょう

  2. (2)迅速かつ正確な相続人調査・相続財産調査が可能

    遺産分割協議を進めるためには、その前提として、相続人調査および相続財産調査を行う必要があります。
    とくに非嫡出子がいる事案では、被相続人に非嫡出子がいるという事実をほかの相続人が把握していない場合もあるため、正確な相続人調査が欠かせません。
    また、相続人であっても被相続人のすべての遺産を把握しているとは限りません。
    したがって、被相続人が亡くなった後は、相続財産についてもしっかり調査しなければならないのです。

    相続人調査や相続財産調査は、一般の方ではどのように進めればよいかわからないことも多い、煩雑で困難な手続きです
    正確かつ迅速な調査を実施するため、専門家である弁護士に依頼してください。

  3. (3)遺産分割調停や審判になっても安心

    相続人による話し合いである遺産分割協議では話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる必要があります。
    また、遺産分割調停でも解決できない場合には、遺産分割審判に進み、裁判官によって遺産分割方法が決定されることになります。

    調停や審判では、調停委員や裁判官に対してしっかりと自分の主張を伝えなければ、不利な判断をされてしまうおそれがあります。
    弁護士に依頼すれば、専門的な知識や交渉の経験に基づきながら、自分にとって有利な事情を適切に主張していくことができます

5、まとめ

婚姻関係にない男女から生まれた子どもは、非嫡出子となり、そのままでは父親の遺産を相続することができません。
父親の遺産を相続するためには、父親から認知を受ける必要があります。

認知を受ければ非嫡出子も嫡出子とともに遺産分割協議に参加することになりますが、普段から交流のない非嫡出子が嫡出子と一緒に遺産分割協議に参加することで、さまざまなトラブルが生じる可能性も発生します。
遺産分割手続きを滞りなく進めるためにも、非摘出子に関する事案は、早めに弁護士に相談しましょう。

遺産相続でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています