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保佐人をつけるべき場合とは? 保佐人の役割や責任、成年後見人との違いを解説

2023年07月11日
  • 一般民事
  • 保佐人
保佐人をつけるべき場合とは? 保佐人の役割や責任、成年後見人との違いを解説

認知症などが原因でご家族の判断能力が低下した場合、成年後見制度の利用を検討しましょう。「保佐」は成年後見制度の一つであり、保佐人は本人(被保佐人)の法律行為をサポートします。

保佐人には同意権や取消権などが与えられる反面、本人を害する行為をすれば民事上・刑事上の法的責任を負う点に注意が必要です。

本コラムでは、「保佐人」について、選任の要件や手続き、権限の内容、成年後見人や補助人との違い、本人を害する行為をした場合のペナルティなどについて、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が解説します。

1、保佐人とは?

保佐人とは、判断能力が著しく不十分になった本人のために、契約などの法律行為をサポートする人のことをいいます
保佐人は、本人や親族などの申し立てにより、家庭裁判所の審判で選任されます。

  1. (1)保佐人の選任要件

    家庭裁判所が保佐開始の審判を行うためには、「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分」であることが要件とされています(民法第11条)。
    「事理を弁識する能力が著しく不十分」とは、「日常の買い物などはできるとしても、不動産取引などの重要な契約による利益や損失を理解・判断するためには、他人からの援助が必要」ということです。

    なお、後述のとおり民法上の成年後見制度にはほかにも「成年後見」と「補助」があり、保佐とは開始要件がそれぞれ異なっています。

  2. (2)保佐人選任を申し立てる手続き

    保佐開始の審判は、以下のいずれかの者が申し立てることができます。

    • 本人
    • 配偶者
    • 四親等内の親族
    • 後見人
    • 後見監督人
    • 補助人
    • 補助監督人
    • 検察官


    申立先は本人の住所地の家庭裁判所であり、必要な費用や必要書類は以下のとおりです。

    <必要な費用>
    • ① 申立手数料:収入印紙800円分
      ※同意権の拡張・代理権の付与のいずれか片方を求める場合には800円を加算、双方を求める場合には1600円を加算
    • ② 連絡用の郵便切手:数千円分程度
    • ③ 登記手数料:収入印紙2600円分
      ※別途鑑定費用の負担が発生する場合あり

    <必要書類>
    • 申立書
    • 本人の戸籍全部事項証明書(発行から3か月以内のもの)
    • 本人の住民票または戸籍附票(発行から3か月以内のもの)
    • 保佐人候補者の住民票または戸籍附票(発行から3か月以内のもの)
    • 本人の診断書(発行から3か月以内のもの)
    • 本人情報シート写し
    • 本人の健康状態に関する資料(介護保険認定書、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳などの写し)
    • 本人の成年被後見人等の登記がされていないことの証明書(発行から3か月以内のもの)
    • 本人の財産に関する資料(預貯金の通帳の写しまたは残高証明書、不動産登記事項証明書、ローン契約書の写しなど)
    • 本人の収支に関する資料(年金額決定通知書、給与明細書、確定申告書、介護施設利用料、入院費、納税証明書など)
    • 同意権、代理権を要する行為に関する資料(同意権付与または代理権付与を求める場合のみ。契約書の写しなど)
  3. (3)保佐人になれる人・選出方法

    以下のいずれかに該当する者は、保佐人になることができません(民法第876条の2第2項、第847条)

    • ① 未成年者
    • ② 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人
    • ③ 破産者
    • ④ 被保佐人に対して訴訟をし、またはした者ならびにその配偶者・直系血族
    • ⑤ 行方の知れない者


    上記に該当しなければ、特別な資格がなくても保佐人になることができます。
    また、自然人だけでなく、法人も保佐人になることが可能です

    保佐人の候補者は、家庭裁判所に対する保佐開始の申し立ての際に推薦することができます。ただし、保佐人の選任は家庭裁判所の職権でなされるため、推薦のとおりに保佐人が選任されるとは限りません

2、保佐人ができること・できないこと

保佐人の権限範囲は民法で定められていますが、家庭裁判所の審判によって同意権の範囲が拡張される場合や、代理権が特別に付与される場合もあります。

  1. (1)保佐人ができること

    保佐人は、被保佐人による、以下のような行為に関する同意権を有します。

    • ① 元本の領収・利用
      (例)預貯金の払い戻し、貸し付け、返済金の受領
    • ② 借財、保証
      (例)借り入れ、連帯保証
    • ③ 不動産その他重要な財産に関する権利の取得や喪失を目的とする行為
      (例)不動産売買、株式売買
    • ④ 訴訟行為
    • ⑤ 贈与、和解、仲裁合意
    • ⑥ 相続の承認・放棄、遺産分割
    • ⑦ 贈与の申し込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申し込みの承諾、負担付遺贈の承認
    • ⑧ 新築・改築・増築、大修繕
    • ⑨ 賃貸借(短期賃貸借を除く)
    • ⑩ ①~⑨の各行為を、制限行為能力者(未成年者など)の法定代理人としてすること

    ※いずれも日常生活に関する行為を除く


    被保佐人がこれらの行為をするためには、保佐人の同意を得なければなりません(民法第13条第1項)。
    同意を得ずになされた行為については、保佐人が取り消すことも認められています(同条第4項)。
    また、上記以外の行為についても、保佐開始の申立権者または保佐人・保佐監督人の申し立てにより、家庭裁判所の審判によって保佐人の同意権の対象に追加されることがあります(同条第2項)。

    なお、後述のとおり、保佐人には本人(被保佐人)に代わって法律行為をする権利(=代理権)は原則としてありません
    しかし、家庭裁判所によって代理権を付与する旨の審判がなされた場合には、審判によって指定された行為を本人に代わって行うことができます(民法第876条の4第1項)。
    代理権付与の審判を本人以外が申し立てる際には、本人の同意が必要です(同条第2項)

  2. (2)保佐人ができないこと

    原則として、保佐人には本人(被保佐人)に代わって法律行為をする代理権がありません。前述のとおり、家庭裁判所の審判によって代理権が付与されることはあります。
    しかし、代理権付与の審判がなされていない場合や、代理権付与の審判の対象外である行為については、保佐人が本人に代わって行うことはできません。

    また、保佐人(法人の場合はその代表者を含む)と被保佐人の利益が相反する行為は、保佐人が自ら行うことはできません(民法第876条の2第3項)
    保佐人自ら行うことができない利益相反行為については、保佐監督人が居ない場合には、保佐人が家庭裁判所に臨時保佐人の選任を請求する必要があります。

3、保佐人と成年後見人・補助人の違い

民法上の成年後見制度には、保佐のほかにも成年後見と補助があります。
本人の判断能力の低下がもっとも著しいのが成年後見、次に保佐、もっとも軽度なのが補助です

保佐人と成年後見人・補助人の間では、選任要件と権限の範囲が異なります。

  1. (1)保佐人と成年後見人の違い

    成年後見人は、本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある」場合に選任されます(民法第7条)。
    保佐の要件が「著しく不十分」であるのに比べて、成年後見人が選任されるのは、本人の判断能力低下がさらに進行しているケースです。

    成年後見人には、日常生活に関する行為を除く法律行為全般につき、包括的な代理権および取消権が認められています。
    本人の判断能力がきわめて低いことをふまえて、成年後見人には保佐人よりも広い権限が認められている点が、大きな違いです

  2. (2)保佐人と補助人の違い

    補助人は、本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である」場合に選任されます(民法第15条第1項)。
    保佐の要件が「著しく不十分」であるのに比べて、補助人は本人の判断能力が相当程度残っている段階でも選任することができます。
    なお、本人以外の者の申し立てにより補助開始の審判をするためには、本人の同意がなければなりません(同条第2項)。

    補助人にも保佐人と同じく同意権や取消権が与えられますが、その対象行為は家庭裁判所の審判によって指定されたものに限られます。
    したがって、通常、補助人の権限範囲は保佐人よりも狭いものとなるのです

4、保佐人が本人を害する行為をした場合のペナルティ

保佐人が本人の利益を害する行為をした場合、民事上・刑事上の法的責任を問われる可能性があります。

  1. (1)善管注意義務違反|損害賠償責任を負う

    保佐人は、善良な管理者の注意をもって本人のために保佐の事務を処理する義務を負います(民法第876条の5第2項、第644条)。

    保佐人が、保佐の事務を行うにあたり、保佐人自らの財産を管理する際と同一の注意をもって行っていたとしても、保佐人として通常なすべき注意を怠っていた場合、保佐人は、そのことによって本人に生じた損害を賠償しなければなりません。

  2. (2)刑事罰|業務上横領罪

    保佐人が本人の財産を不正に処分した場合などには、業務上横領罪の責任を問われる可能性があります(刑法第253条)。

    業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」であり、窃盗や詐欺などと並ぶ重罪とされています

5、まとめ

ご家族が認知症などにかかって判断能力が低下した場合には、保佐を含む成年後見制度の利用をご検討ください。
適切に成年後見制度を利用すれば、本人の権利や財産を守ることにつながります。

ベリーベスト法律事務所では、成年後見制度の利用に関するご相談を承っております
弁護士が具体的な状況を伺うことで、利用すべき制度を適切に選択することができます。
また、申し立ての代行や、弁護士自身が後見人に就任するなど、さまざまな側面から、ご本人の権利や利益を守るために幅広くサポートいたします。
成年後見制度の利用を検討されている方は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所にご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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