相続放棄の期限はいつまで? 相続放棄の流れや期限が近い場合の対処法

2025年03月10日
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相続放棄の期限はいつまで? 相続放棄の流れや期限が近い場合の対処法

被相続人に多額の借金があるようなケースでは、積極的に遺産を相続するメリットはありませんので、「相続放棄」を検討した方がよいでしょう。

ただし、相続放棄には期限があります。法定の期限までに手続きをしなければ、相続放棄ができなくなるため、相続が開始したときは、早めに相続放棄の判断をすることが重要です。

今回は、相続放棄の期限や流れ、期限が近い場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスの弁護士が解説します。


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1、相続放棄の期限は?

相続放棄の期限はどのくらいなのでしょうか。以下では、相続放棄の期限と期限が過ぎたらどうなるのかについて説明します。

  1. (1)相続放棄の期限

    相続放棄の期限は、自己のために「相続の開始があったことを知ったとき」から3か月以内です(民法915条)。

    「相続の開始があったことを知ったとき」とは、通常、被相続人が亡くなったことを知った日を指します。被相続人と一緒に生活していれば、被相続人の死亡日に相続の開始を知りますが、遠方に住んでいたり、被相続人と疎遠だったりする場合、家族から被相続人が亡くなった旨の連絡がきたときが相続の開始を知ったときとなります。

    なお、相続放棄をすると後順位の相続人に相続権が移りますが、後順位の相続人は、相続放棄がなされたことを知る術がありません。そのため、後順位の相続人は、相続放棄をした先順位の相続人から相続放棄をした旨の連絡を受けた時点から、相続放棄の期限のカウントがスタートします

  2. (2)相続放棄の期限が過ぎたらどうなる?

    相続放棄の期限内に相続放棄をしない場合、「単純承認」をしたものとみなされます。単純承認をすると、原則として相続放棄をすることができなくなります

    単純承認とは、プラスの財産やマイナスの財産をすべて相続することをいいますので、被相続人に多額の借金があったとしても、それをそのまま引き継がなければなりません。

    相続放棄を検討中の方は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」という相続放棄の期限内に手続きを行うよう注意しましょう。

2、相続放棄の流れや必要書類

以下では、相続放棄の基本的な流れとその際に必要になる書類などについて説明します。

  1. (1)被相続人の財産を調査する

    相続放棄をするかどうかの判断をするためには、被相続人がどのような財産を有しているかを把握しなければなりません。そのため、まずは、被相続人の財産調査が必要になります。

    調査すべき主な財産としては、以下のものが挙げられます

    • 現金、預貯金
    • 不動産
    • 有価証券
    • 自動車
    • 借金やローンなどの負債


    相続放棄との関係では、特に借金やローンなどの負債の調査が重要になります。

    被相続人に借金を調べるには、以下のような調査方法があります。

    • 自宅に契約書があるか調べる
    • 通帳からローンの引き落としがなされているか調べる
    • 郵便物に消費者金融やローン会社からの手紙があるか調べる
    • 信用情報機関に個人の信用情報開示請求を行う


    相続財産調査にはある程度の時間がかかりますので、相続開始を知ったときは、すぐに相続財産調査に着手することが大切です。

  2. (2)必要書類を用意する

    相続放棄の申述をするには、裁判所ウェブサイトによると、以下の書類を用意する必要があります。

    申述人のケース 必要書類
    共通の必要書類
    • 相続放棄の申述書
    • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
    • 申述人の戸籍謄本
    申述人が配偶者の場合
    • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
    申述人が子どもまたはその代襲者の場合
    • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
    • (申述人が代襲者の場合)本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
    申述人が被相続人の父母・祖父母の場合
    • 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
    • (被相続人の子どもが亡くなっている場合)その子どもの出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
    • (直系尊属で亡くなっている人がいる場合)その直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
    ※先順位の相続人などから提出済みの書類は不要
    申述人が被相続人の兄弟姉妹の場合
    • 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
    • (被相続人の子どもが亡くなっている場合)その子どもの出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
    • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
    • (申述人が甥姪の場合)本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
  3. (3)家庭裁判所に申し立てる

    上記の書類が準備できたら、家庭裁判所に相続放棄の申述を行います。

    相続放棄の申述をすると、裁判所から「照会書」が届きますので、照会事項に回答して、裁判所に送付します。その後、特に問題がなければ裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届き、相続放棄の手続きは完了となります。

3、相続放棄の期限が近づいている場合の対処法

相続放棄の期限が近付いているという場合には、以下のような対処法を検討しましょう。

  1. (1)期間伸長を申し立てる

    相続放棄の期限までの期間のことを「熟慮期間」といいます。熟慮期間内に相続放棄をするかどうかの判断ができない場合には、家庭裁判所に期間伸長の申し立てをすることができます

    熟慮期間の伸長が認められる主なケースとしては、以下のとおりです。

    • 被相続人の借金総額が不明な場合
    • 相続財産調査に時間がかかっている場合
    • 相続人の調査に時間がかかっている場合る
    • 他の相続人により相続財産が隠されている場合


    単に仕事や家事で忙しくて相続放棄が間に合わないという理由だけでは、相続放棄の期間の伸長は認められない可能性が高いため注意が必要です。

  2. (2)相続放棄申述書を提出する

    相続放棄は、期限内に手続きを完了していなくても、期限内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出していれば手続きを進めることができます。

    つまり、戸籍謄本などのその他の書類の準備が期限内に整っていなかったとしても、相続放棄申述書を提出していれば、相続放棄が可能ということです。

    相続放棄の期限が迫っている場合は、ひとまず相続放棄申述書のみを提出し、その他の書類は準備ができ次第提出する旨を伝えておくとよいでしょう

  3. (3)弁護士に相談する

    相続放棄の期限内にすべての手続きを完了するには、弁護士のサポートが重要になります。

    相続財産調査や相続人調査など時間や手間のかかる手続きでも、経験豊富な弁護士であれば迅速に対応することができるでしょう。また、どうしても期限までに間に合わないという場合には、弁護士が相続放棄の期限の伸長を申し立てることも可能です。

    そのため、相続放棄の期限が近い場合には、すぐに弁護士に相談するのがおすすめです。

4、相続トラブルを弁護士に相談するメリット

相続トラブルを弁護士に相談すると以下のようなメリットがありますので、相続トラブルでお困りの方は、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。

  1. (1)相続放棄に関するアドバイスができる

    相続放棄をするかどうかの判断に迷っている方は、弁護士に相談をすることで相続放棄のメリット・デメリットや相続放棄をすべきかどうかのアドバイスをもらうことができます。

    また、相続放棄をする場合、遺産に手を付けてしまうと単純承認をしたものとみなされてしまい相続放棄ができなくなるなどいくつか注意すべきポイントがあります。弁護士に相談をすれば相続放棄の際に気を付けるべきことについてもアドバイスを受けられるため、安全に相続放棄の手続きを進めることができるでしょう。

  2. (2)迅速かつ正確な財産の調査が可能

    被相続人の財産が多岐にわたる場合、相続財産調査を完了するまでに相当な時間がかかることも少なくありません。財産ごとに照会すべき機関が異なりますので、相続財産調査に関する知識や経験がなければ、相続放棄の期限内に相続財産調査を完了することは難しいといえます。

    実績のある弁護士であれば、迅速かつ正確に被相続人の財産を調査し、特定に尽力します。相続財産調査は、相続放棄をするかどうかの判断の前提としても重要なものになりますので、弁護士に依頼して行うのがおすすめです。

  3. (3)遺産相続に関する手続きの代理人になれる

    相続放棄の申述をする際には、弁護士が代理人として書類収集や申立書の作成などを行います。また、裁判所との対応もすべて弁護士が行うことができますので、弁護士に依頼すれば、精神的なストレスを軽減することができます。

    また、時間や手間も大幅に削減できますので、早期に相続手続きを終えることができるでしょう。

5、まとめ

相続放棄の期限は、相続の開始を知ってから3か月です。期限内に相続放棄の申述をしなければ、原則として相続放棄ができなくなりますので、早めに手続きを進めていくようにしましょう。

ただし、相続放棄の期限内に相続財産調査が終わらないなどの場合は、相続放棄の期限を延長することができます。相続放棄すべきかどうか、対処法がわからない場合は、早めに弁護士に相談するようにしましょう

相続放棄や遺産相続に関するお悩みは、ベリーベスト法律事務所 福山オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています