出資法違反にあたる行為とは? 罰則や逮捕された場合の刑事手続きの流れ

2021年11月30日
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出資法違反にあたる行為とは? 罰則や逮捕された場合の刑事手続きの流れ

企業から売掛債権を買い取って手数料を徴収することで利益を得るファクタリングは、企業が現金化を早める方法として認知されはじめています。

一方で、国民生活センターではトラブル事例が紹介されており、全国でも「出資法違反」の容疑で逮捕されるケースが報じられるケースも目にするようになりました。

本コラムでは「出資法」とはどのような法律なのか、出資法違反になる事例や罰則、逮捕された場合の流れについて、福山オフィスの弁護士が解説します。

1、出資法とは?

出資法とは略称であり、正確な名称は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」といいます。
まずは出資法がどのような法律なのか、目的や規制している内容をみていきましょう

  1. (1)出資法の目的

    出資法の大きな目的は「一般大衆の財産の保護」です。
    生活の基礎となる大切なお金を他人に出資したり預けたりすることで失ってしまう事態や、借り手であるという弱みにつけ込まれて高額の手数料を搾取されてしまう事態を防ぐために、昭和29年に制定されました。
    以後、社会の情勢に応じてお金・財産に関するトラブルも変化してきたため何度かの改正が加えられており、平成22年の完全施行によって現在のかたちになっています。

  2. (2)出資法の主な内容

    出資法が規制する主な内容を挙げていきましょう。

    ● 出資金の受入れの制限(第1条)
    不特定かつ多数の者に対して、後日、出資金の全額またはこれを超える金額に相当する金銭を支払うことを示して出資金を受け入れる行為です。
    「必ずもうかる」「元本保証」といったうたい文句で出資を集めると出資法違反となります

    ● 預り金の禁止(第2条)
    ほかの法律によって特別に認められている場合を除き、不特定かつ多数の者から預金・貯金・定期積金・社債・借入金などの名目で、業として預り金をする行為です。
    これらの行為は、銀行・信用金庫・農業協同組合などがそれぞれ法律に基づいて特別に認められているものなので、許可のない個人・法人が預り金をすることはできません

    ● 浮貸しの禁止(第3条)
    金融機関の役員や職員などが、その地位を利用して自己または金融機関以外の第三者の利益を図る目的で、金銭の貸付や金銭貸借の媒介、債務の保証をする行為です。
    つまり、金融機関の正規の業務としてではなく、いわゆるサイドビジネスとして金銭を貸し付けたり債務を保証したりする取引行為は固く禁じられています

    ● 金銭貸借の媒介手数料の制限(第4条)
    金銭貸借等の媒介をおこなう者が、貸借額の100分の5を超える手数料等を受領する行為です
    連帯保証人あっせん手数料などの名目による脱法行為を禁止するために設けられています。

    ● 高金利の処罰(第5条)
    金銭の貸付をおこなう者が、年109.5%・1日あたり0.3%を超える割合の利息の契約をする行為です。
    業として金銭の貸付をおこなう者の場合は、年20%超える割合の利息の契約が違法となります。

    さらに、業として金銭の貸付をおこなう者が年109.5%・1日あたり0.3%を超える割合の利息の契約をすると「超高金利」となります

2、出資法違反で逮捕された事例

出資法は、刑法や道路交通法といった法律のように身近に感じる機会が少ないので、なじみがないという方も多いでしょう。しかし、実際に出資法違反として逮捕された事例に目を向けると、意外にも生活に近いところで犯罪が起きていることがわかります。

たとえば以下のように、出資法違反として逮捕されたという事例がありました

● 超高金利の「給料ファクタリング」を営んだ事例
ファクタリングとは、決済期日前の売掛債権を第三者に譲渡するなどの方法で資金を調達する取引で、貸金業法や出資法の規制を受けないものとされてきました。
ところが、給料を受け取る権利を債権として業者に譲渡し、給料が支給されたら額面どおりに買い戻す「給料ファクタリング」が登場し、多額の手数料を要求する業者が増加したことから大きな社会問題となっていました。

給料ファクタリングについて金融庁は「経済的に貸付と同様の機能を有している」という見解を示しているため、貸金業者と同じように出資法の規制を受けます。

令和3年1月には、大手の給料ファクタリング業者が法定利息である年利20%の約14~31倍という超高金利の利息を受け得とったとして、社長ら男女7人が逮捕されました。
「即日融資に代わる給料ファクタリング」などのうたい文句で勧誘したとみられています。

なお、この業者は貸金業者としての登録を受けていなかったため、出資法違反と同時に貸金業法違反の容疑もかけられての逮捕でした。

3、出資法違反の罰則

出資法違反にはどのような罰則が設けられているのでしょうか?

  1. (1)各類型の罰則

    出資法違反の罰則は、違反した類型によって異なります

    【出資金の受入れの制限・預り金の禁止・浮貸しの禁止・金銭貸借の媒介手数料の制限】

    • 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらを併科(第8条3項)


    【高金利の処罰】

    • 金銭の貸付をおこなう者が年109.5%を超える割合の利息の契約をした場合
    • 金銭の貸付をおこなう者が業として年20%を超える割合の利息の契約をした場合
    • 5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらを併科(第5条1項・2項)


    【超高金利の処罰】

    • 金銭の貸付をおこなう者が業として年109.5%を超える割合の利息の契約をした場合
    • 10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金、またはこれらを併科(第5条3項)
  2. (2)両罰規定

    出資法違反にあたる行為のうち、高金利の処罰にあたるもので、法人の従業員などが違反をはたらいた場合は、本人だけでなく事業主も刑罰を受けることになります。
    これを「両罰規定」といい、事業主には、高金利の場合で3000万円以下、超高金利の場合では1億円以下の罰金が科せられます。

4、逮捕された後の刑事手続きの流れ

出資法違反にあたる行為があった場合は、警察・検察官による綿密な内偵捜査が徹底されることになります。
捜査の手が伸びる事態を事前に察知する手だてはないので、突然の逮捕に驚かされることになるでしょう。

警察に逮捕されると、その後はどのような刑事手続きを受けるのでしょうか?

  1. (1)逮捕・勾留による最長23日間の身柄拘束を受ける

    警察に逮捕されると、逮捕が執行された時点でただちに身柄が拘束され、自由な行動が制限されます。
    警察署の留置場に身柄を置かれるため、自宅へ帰ることも、会社に通うことも許されません。

    警察官による取り調べを受けたのち、逮捕から48時間以内に検察官へと送致されます。
    送致を受けた検察官は、さらにみずからも被疑者を取り調べたうえで送致から24時間以内に裁判官へ勾留を請求するか、被疑者をただちに釈放しなくてはなりません。

    裁判官が勾留を許可すると、初回で原則10日間以内、検察官からの延長請求があり、裁判官が認めればさらに10日間以内、合計で20日間以内の勾留を受けます。
    勾留中の被疑者の身柄は警察へと戻され、検察官による指揮のもとで警察官による取り調べが続きます。

    逮捕・勾留による身柄拘束の期間は、合計すると最長で23日間です。
    出資法違反事件は事案の概要が複雑であり、証拠の精査や分析にも時間を要するケースが多いため、長期の身柄拘束を受けるのは必至でしょう

  2. (2)起訴されれば刑事裁判に発展する

    勾留が満期を迎える日までに検察官が起訴すると、被疑者は被告人として刑事裁判を受ける身となり、さらに勾留を受けます。
    裁判官が保釈を認めない限りはさらに身柄拘束が続くため、社会生活への悪影響は甚大なものになるでしょう

    刑事裁判では、検察官が犯罪を証明する証拠を裁判官に提出するとともに、被告人側の弁護人も被告人にとって有利な証拠を提出して、裁判官の審理を受けます。
    刑事裁判の最終回には判決が言い渡され、不服を申し立てない場合は言い渡された刑罰が確定します。

  3. (3)早期釈放や有利な処分を期待するなら弁護士に相談を

    出資法違反の疑いで警察に逮捕されてしまった場合は、ただちに弁護士に相談することをおすすめします。

    逮捕直後から裁判官が勾留を決定するまでの期間は、たとえ家族であっても被疑者との面会を許されません
    この期間に被疑者と面会できるのは弁護士だけです。
    家族や会社への連絡のほか、今後の見通しや取り調べに対するアドバイスを得るには、弁護士による接見が唯一の手段となります。

    弁護士に弁護活動を依頼することで、金銭的な損害を被った被害者との示談交渉を進められるだけでなく、逃亡や証拠隠滅のおそれを否定して、逮捕・勾留による身柄拘束からの早期釈放が期待できます
    被害者への弁済が尽くされている、会社側の指示に従っただけで積極的に違法行為をはたらいたわけではないといった有利な事情があれば、検察官が不起訴処分とする可能性も高まるでしょう。
    検察官が起訴に踏み切った場合も、被告人にとって有利な判決が下されるよう刑事裁判での弁護活動を尽くします。

    早期釈放や不起訴・執行猶予といった有利な処分を期待するなら、弁護士のサポートは欠かせません。
    刑事事件の弁護活動はスピード勝負です。
    容疑をかけられてしまった場合は、ただちに弁護士に相談してサポートを受けましょう。

5、まとめ

出資法は一般大衆の財産の保護を目的とした法律です。出資金の受入れの制限・預り金の禁止・浮貸しの禁止・金銭貸借の媒介手数料の制限・高金利の処罰などが規定されており、実質的に貸金業と同様である「給料ファクタリング」も規制の対象となっています。
出資法違反の疑いをかけられてしまうと、警察に逮捕されて長期の身柄拘束を受けるおそれが高いでしょう。ただちに弁護士に相談してサポートを求めるのが賢明です。

逮捕・勾留による身柄拘束からの早期釈放や不起訴・執行猶予といった有利な処分を期待するには、弁護士のサポートが欠かせません。
出資法違反の疑いをかけられてしまった場合は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 福山オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています